ビジネス

2018.12.18

勝ち組と負け組、スタートアップの二極化が進んでいく

グロービス・キャピタル・パートナーズ 高宮慎一


勝ち組と負け組、スタートアップの二極化が進む

メルカリの上場についても触れましょう。メルカリが上場する以前と以後で大きく変わるのは、スタートアップの資金調達額です。例えば、数年前であればシリーズAで3億円調達しただけでも話題になりましたが、いまでは10億円の調達は当たり前になっている。

そんな中でメルカリは上場前に総額で約174億円を調達。その資金で海外進出の足がかりをつくり、メルペイなど新規事業まではじめました。

いまはベンチャーキャピタル(VC)の層も厚くなり、大企業もオープンイノベーションに積極的で、政府からもお金が入るようになっている。メルカリがモデルケースになって、上場前に大きな金額を集める流れは今後も続いていくでしょう。

とはいえ、全ての会社が必ずしも恩恵を受けられるわけではありません。スタートアップ業界でも勝ち組と負け組の格差がはっきり開くようになるのが、ポスト・メルカリ時代のひとつの流れだと思います。

理由としては、投資の集中です。スタートアップ業界に流れる資金の量は年々増えています。投資の裾野は広がっていますが、ベンチャーキャピタルもリターンをあげないといけないので、みんな良い案件に投資したい。良いスタートアップはたとえ価格が高騰したとしても、多くのベンチャーキャピタルが集中するでしょう。

一方で、シリーズAで行き詰まってしまうスタートアップも増えるでしょう。とはいえ、必ずしも悲観することではありません。特にテック分野では、大企業であっても起業経験者を積極的に採用している。長期的なキャリアを考えれば、ある程度の年齢で会社を立ち上げてみるのは決して悪い選択肢ではないかもしれません。そして、アクハイヤ(人材採用目的のM&A)も増えています。

ベンチャー業界勢力図は、2大リーグ制になる

また、起業家のキャリアについて言及するならば、山田進太郎さんのようなシリアルアントレプレナー(連続起業家)も増えるでしょう。山田さんは過去にウノウという会社を立ち上げ、アメリカのZyngaに売却していますが、この経験はメルカリの経営にもかなり生かされている。

初期のラウンドでメルカリが投資家から評価された要因のひとつは、経営陣全員がシリアルアントレプレナーだったこと。山田さんに加え、バンクオブイノベーションの創業者の富島寛さん、米ロックユー社の創業者でもある石塚亮さん。ミクシィのCFOだった小泉文明さんのジョインが決まっていたことです。また、僕は個人的にも山田さんとは付き合いが長く、彼の実力をある程度知っていました。

過去の信用力や経験をもとに強力なチームをつくったことが、資金調達にもつながっている。ほかにもミラティブの赤川隼一さん(DeNA出身)のように、大企業出身者の起業家も増えでいくでしょう。

大人だからできる蓄積した信頼に頼ったパワープレイという意味では、若い経営者からすればアンフェアに思えるかもしれません。ですが、一方では20代の若者が10億単位でバイアウトを成し遂げる例も増えている。彼らが大企業でマネジメント経験を積んで、シリアルアントレプレナーになることも多いでしょう。

これからは若い頃にある程度の成功収めるマイナーリーグと、その出身者がシリアルアントレプレナーとして参戦するメジャーリーグというように、1人の起業家が舞台に2度立つサイクルが確立すると思います。

文=野口直希 写真=小田駿一

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