ビジネス

2018.12.18

勝ち組と負け組、スタートアップの二極化が進んでいく

グロービス・キャピタル・パートナーズ 高宮慎一


これからという意味ででは、僕が今一番注目しているのがミラティブです。ミラティブはゲームプレイの配信に特化した動画配信プラットフォームで、「友だちの家でドラクエをやる」感覚で、ゲームをきっかけとした濃いコミュニティを築いています。

一般的に、スタートアップがゼロから新しい市場、価値観をつくるの相対的な難易度は高いです。すでに顕在化しているマーケット、リアルの習慣をネット化する、PCやフィーチャーフォンといった旧時代のデバイスをスマホといった新時代のデバイスで置き換えていくほうが、だいぶ簡単なんですよね。

メルカリはいわば、デジタル版フリーマーケットを実現しているサービス。不要になった服を出品したり、値下げ交渉をカジュアルにしたり、掘り出し物を見つける体験をスマホに最適化したデザインで提供している。いわばフリマ体験を提供価値にしています。

当初はいきなりネットで新しい習慣を作るのだと、普及までに時間がかかるかもとも思いましたが、振り返ると実はミクシィコミュニティの中でメンバー同士が手渡しで売買していたように、実はニーズは顕在化していたのです。

また、提供価値と言う意味では、ヤフオクなどのオークションは、買い手は安く買いたい、売り手は高く売りたいという経済原理で動いていて、少し違う文脈のサービスだと思っています。

また、そういう意味では「ゲームプレイ配信」はまさに、すでに濃いコミュニティができあがっているのに、最適化したサービスが出現していないマーケットです。日本のYouTuberのコンテンツのうち25%位がゲームプレイ動画なのに、YouTubeは決してゲームプレイに最適化されたプラットフォームではありませんし、他にプラットフォームもありません。ここに特化したサービスの需要は、間違いなくあるはずです。

さらに、中国ではゲームのストリーミングでの広告がゲーム市場全体の10%近くを占めている。日本のゲーム市場は約1兆円なので、広告配信だけでも1000億円規模は見込めるということもあります。

「マス」がなくなり、あらゆる領域がサブカル化している現代では、マネタイズ可能性のありそうな「濃いコミュニティ」に特化したサービスが強くなる。そこに上手にフィットしそうなサービスはゲーム以外にもまだまだある気がしています。既に90%くらいのトラフィックが海外で、既に世界最大のフリーサーフィンメディアになっているNobodySurfもその例でしょう。

その一方で、新しい技術体系も生まれてきていて、IoTやブロックチェーン、AI(人工知能)は90年代のITみたいになっている。いまはバブルのようになっていますが、それらの技術が出口のマーケットと結びつき、テクノロジーシーズとユーザーニーズがマッチングされれば、Next Big Thingがやってくると思っています。そういう意味では、インターネットの残り香と新技術の萌芽に両張りする時代にある、と思っています。
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文=野口直希 写真=小田駿一

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