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2018.12.16

遊び心で「移住」を促進、九州で開催されたもう一つのドラフト会議

10月21日に開催された「南九州移住ドラフト会議2018」

平成最後の甲子園と言われ、今年の夏の甲子園は大いに盛り上がった。そしてその数か月後、決勝を戦った金足農業高等学校、大阪桐蔭の選手たちがプロ野球ドラフト会議で指名を受けた。

期待の新星たちの行方が話題となる中、実は遠く離れた九州で、その会議を真似した遊び心のある移住支援企画「南九州移住ドラフト会議2018」が地元有志が立ち上げた任意団体・南九州地域間連携推進機構(MLP)の主催で開催されていた。2016年に鹿児島県ではじまり、少しずつ拡大しながら、今年は北海道や南九州(鹿児島県・宮崎県)で行われた企画だ。

12の地域が移住希望者を指名する

ルールは基本的に、プロ野球ドラフト会議と同様だ。「南九州移住ドラフト会議」には、鹿児島県の「カ・リーグ」と宮崎県の「ミ・リーグ」があり、それぞれのリーグに6つの地域コミュニティ(球団)が所属している。

カ・リーグは、阿久根市、鹿児島市騎射場地域、大崎町、日置市美山地域、薩摩川内市上甑島、長島町から6球団。ミ・リーグは、延岡市島浦地域、美郷町南郷渡川地域、綾町、新富町、宮崎市、日南市から6球団、それぞれの地域に根差した地域コミュニティが球団として所属している。地域コミュニティ(球団)の中心メンバーは、地域の地元中小企業からまちづくり会社、有志団体、行政マン、大学生など様々である。

そのリーグに対して、移住希望者が「選手」としてエントリーする。指名会議当日に向けて、選手と球団の双方の魅力が理解できるようなプログラムやプレゼンが用意されており、それをふまえて、今回は選手36人の指名が行われた。

指名された希望者と地域には、1年間の独占移住交渉権が生じる。もちろん、同じ順位で同じ選手に指名があった場合は本家同様に「くじ引き」で交渉権を獲得する。


球団側は特色を出して獲得に望む

どんな人たちが移住希望者なのか

移住支援のイベントは無料のことが多いが、このドラフト会議にエントリーする移住者は、参加費として5万円を支払う(羽田─鹿児島の往復航空券を含む)。それでも36名定員に達する集客を実現できている。

選手たちのプロフィールは、都内で地方自治体向けの仕事をしている人、教育関係者、ウェブディレクターなど様々だ。今回は鹿児島県と宮崎県に限定ということもあり、鹿児島県内出身、祖母が宮崎県出身など縁やゆかりがあるような人も多かった。

実際に、選手たちに話を聞いてみると、神奈川県在住の男性は「夫婦ともに宮崎県出身で、子供が生まれるタイミングで移住を考えているが具体的に何をしたらいいかわからないところに今回の企画を見つけた。宮崎県内でいい話があればどこでも構わない」という。

また、東京から夫婦で出場していた選手は、奥様の実家がある宮崎県に移住を考えているという。夫婦別々のエリアに指名をされたため、今後の展開が気になるところである。

その一方で、今は移住の本気度は高くないが、「いろいろな地域の面白い人たちとつながりたい」「すぐに移住ではなくても、プロボノ的に手伝えることがあるならできる範囲で貢献したい」という人たちもいた。
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文・写真=内田有映

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