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2018.12.16 09:00

遊び心で「移住」を促進、九州で開催されたもう一つのドラフト会議


運営者たちは、常々、このドラフト会議のことを「壮大なコント」だという。ミ・リーグのコミッショナーでもある田鹿倫基氏は「移住というのを重く受け止めず、壮大なコントを通じて、移住に対して面白く身近に感じてくれれば。今すぐ移住しなくても構わないし、年1~2回遊びに行くような気軽なものでも構わない」という。

地域コミュニティ(球団)側には、各地域で活躍している、いわゆる“キーパーソン”が集まっている。情熱的な人たちと交流すると、その地域の魅力を感じやすく、親近感や愛着もわきやすい。交流人口を増やすという意味でも非常に効果的だ。

遊びに来て、地域の魅力をSNSで発信してくれるだけでもいい。地元の人たちと交流してくれるだけでも構わない。そんなスタンスで過去3年間実施して、実際に移住した人は1割近いという。打率1割は、施策としてはかなり高い印象だ。

壮大なコントに対する徹底感

プロ野球を真似した「南九州ドラフト移住会議2018」は、その徹底した模倣っぷりでも注目されている。

球団側と選手側の初顔合わせは、「移住力強化キャンプ」と題し、明治神宮外苑・室内球技場で行った。室内球技場で、野球の練習が中心になく、アイスブレイクや交流、相互の魅力を発信するプレゼンを行った。


室内球技場でチームごとにアイスブレイク

指名会議当日も、鹿児島市内の有名ホテルの大広間を貸し切り、地元のアナウンサーが司会進行を行う。まさに見ている光景はプロ野球のドラフト会議そのもの。壮大なコントに真剣になる大人たちの姿は、「移住を支援しないといけない」という義務感というより、主体的にワクワク楽しんでいる。そんな様子に見えた。


大広間を貸し切りプロのアナウンサーが司会をするこだわり

移住施策のこれから

地方創生のテーマとして、「人口減少に歯止めをかける」は各地域の課題になっている。歯止めをかけるために、各地域色々な移住イベントなどが全国各地で行われている。移住したら2年間給与を保証するような補助金支援や、相互に履歴書と業務内容を紹介しあうようなマッチングの機会がどちらかといえば主流である。

しかし、「我々の地域に移住しましょう! 食事は美味しいし自然は豊かだし地域はいいところですよ」とPRしても、響くような時代ではなくなっているのは明らかだ。その解決の糸口となるのは、「遊び」のエッセンスなのでなないか、と今回の会議を見ていて感じた。

ビジネスでも「何をやるか、どこでやるかより、誰とやるか」とはよく言うが、移住先の地域にどういう魅力的な人たちがいるのか、歓迎してもらえそうなのか、そんな“顔”が見える方が移住意欲は高まるのではないだろうか。その点、移住ドラフト会議は壮大なコントを通じて上手にマッチングできているように思う。

前回、仕事も「遊び」の要素を入れるとモチベーションが変わってくると紹介したが、移住施策の企画も同じだ。移住のハードルを下げる「地元の魅力的な人たちと交流」を軸に考えてみると、各地でユニークな移住企画がもっと増えてくるかもしれない。

連載:「遊び」で変わる地域とくらし
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文・写真=内田有映

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