成長するにつれ、その役割は家事周りの手伝いから、朝に母親の起床と着替え、朝食の介助へと変わっていった。そして全てをフルタイムのマーケティングの仕事に出勤する前に急いで済ませなければならなかった。
「これまでの人生で最もつらく、孤独で、ストレスの溜まる生活でした」と彼女は言う。
母親が入院したのは、ビジネススクール1年生の時だった。このため予定通りに期末試験を受けることができず、教授や友人らに母親の病気について打ち明けざるを得なかった。ところが、周囲からの言葉は予想外のものだった。多くが自分と似た経験をしていたのだ。
「深いつながりを感じた瞬間でした。自分と同じような悩みを持った人がいたのです。私たちはなぜ、自分のような家庭により多くの支援やインフラを提供する方法を見つけられなかったのでしょう?」
これがきっかけとなり、ジュリストロスナーは高齢者や慢性疾患患者、障害者の介護サービスをコーディネートする企業「ウェルシー(Wellthy)」を立ち上げた。人口動向や政策転換にも後押しされ、ウェルシーはここ4年間で急成長。現在ではハーストやスナップチャットを含む400近くの企業が従業員の福利厚生としてウェルシーのサービスを提供している。
介護に特化した他の企業もまた、需要の急増を経験している。創業12年のケアリング・トランジションズ(Caring Transitions)は、高齢者向け介護施設入居や遺品整理を支援する企業で、全米各地に200のフランチャイズを展開している。
同社のアル・スコベル最高執行責任者(COO)は「どの家族にもそれぞれのストーリーがある」と語る。彼自身もそのひとりだ。ニューヨークに住む母親ががんで亡くなった時、スコベルはインディアナ州に住んでいた。
仕事と子育てに追われていた彼とその兄弟は、性急に遺品整理を行い、保管しておきたいものだけより分けて残りは捨ててしまった。「私たちはとても取り乱していた。感情が高ぶっていたため、家族にしばらく悪影響が残った」とスコベルは振り返る。