ビジネス

2018.12.17

力を尽くした10年は、これから力を尽くす10年の始まり

世界最大の投資会社バークシャー・ハサウェイを率いるウォーレン・バフェット(右)とチャーリー・マンガー(左)も高齢ながら健在だ。


あの頃と考え方のベースは変わっていないが、変わったのは“抗うことをやめた”ということ。起きている運命を全部受け入れよう、おもしろおかしく、でも真剣に生きよう─。そう考えたら、だいぶ楽になった気がする。

そのような背景もあって私自身がとても元気になり、ファンドマネジャーとしての経験値も高まり、運用手法も多様化。信頼できる仲間も増えた。

次の10年に向けて「やってやるぞ!」と思っている。

「1兆円」のさらなる先へ

ひふみ(マザーファンド)は運用資産残高が8000億円を突破して、もうすぐ1兆円も見えてくる。一つのファンドでここまで集めたというのは、確かに過去に誰もやってこなかったことなので、「がんばったね」とか、あるいは「これが限界だね」など、色々な声が聞こえてくる。

日本の株式投資信託は、ずっと「3000億円の壁」があると言われてきた。しかし、私たちが3000億円を超えても失速しなかった理由は「たくさんお金が集まったけれど、どうしよう?」という「How」ではなく、「どうありたいか?」という「Be」で考えたことであると思う。

ひふみの創業理念というのは、もともと「日本、そして世界の人に、希望を灯す存在になりたい」というものだった。そう考えると、私たちはやっといまスタートラインに立ったところだと思っている。

北海道から沖縄まで、がんばって働く人たちが一所懸命に貯めたお金を集め、それをまた同じくがんばっている会社にシャワーのように還流し、世の中を支えていく─それがひふみの仕組みである。その仕組みがやっと機能しはじめたところではないか。

いずれ実際に「日本が豊かになったね」と思える時が訪れたら、そのうちの一つとしてひふみというものが機能していた、そう振り返ってもらえるならうれしい。

だから、私としては「これからの10年間でいかに全力投球し、力を尽くすか」ということが大事だ。

10年後は62歳。でも、「そのあとさらに70歳までがんばるぞ」というと、“老害”と感じる向きもあるかもしれない(笑)。バトンタッチする着地点を探っていきながらになるだろう。

世の中を元気にするひふみという、一つの生命体というか、大きな宇宙というものを、次の世界に継続するための10年にできたらよいと思う。

文=藤野英人

この記事は 「Forbes JAPAN 新しい現実」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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