──起業家として大事な3要素を挙げるとすれば、何でしょうか?
麻生:そうですね、最初に2つ挙げるなら「ROI(Return On Investment:投資収益率)意識」「仲間の獲得」でしょうか。
1つ目の「ROI意識」ついてですが、創業期はお金がいきなり入ってくるわけではないので、コストをいかに切り詰めることができるかがキモになってきます。突き詰めると、大事なことには時間やお金、人などを投入し、無駄な事は削るという意識が強くなりました。「何かを削るから何かが強化できる」という等価交換の考え方が根底にあると思います。
コストカットは地道に出来る事だったりするので、どれだけ減らせるか、減らした分をどこに活用できるのか、そういう思考は創業初期から心がけています。「ヒカカク!」自体も自分の持っている資産を一番高く買ってくれるお店ってどこだろうという疑問やこだわりが原点になっているので、そういった「ROI意識」は私の行動として一貫していると思います。
柴田:「ROI意識」に関連するのですが、人を採用する際に、その人の能力を一番引き出せる仕事や環境は何だろうと考え抜くのは麻生の特長だと思います。「ROI意識」という意味では、入社してくれた人が一番パフォーマンスを発揮できることがベストという考え方になるので、どんな仕事を担当してもらえば最大限の力を発揮してもらえるのか、エンジニアからアルバイトに至るまで慎重に検討していくタイプだと思います。
──参画してくれた方のパフォーマンス向上化を考える = 「ROI意識」という考え方は初めて聞きました。お金以外の部分でも資源の価値を最大化する姿勢が一貫されているのですね。
麻生:「ROI意識」が結果的に、起業家として大事な2つめの要素「仲間の獲得」に繋がっています。創業以来、たった1人の優秀な人の入社で会社が大きく変わっていくのを目の当たりにしているので、採用には社長である私がかなりのリソースを投下して頑張っています。
採用はタイミングと粘り強く接点を持ち続けることがポイントで、「あの人は1年前に会社を辞めようかと考えていたから、そろそろ声を掛けるか」というアンテナを張ることは欠かさずやっています。突き詰めていくと、採用・育成がしっかりできれば、強い組織が出来上がり、究極的には社長自身が手を下さなくても成長する企業になる側面があるような気がしています。
採用が上手くいっていない場合の極端な話をすると、エンジニア出身の社長がコードを書いてしまって、社員に技術が伝播しないために組織が広がらず、シードステージから抜け出せないという例もあります。やはり採用・育成は経営者が一番力を入れるべきことだと思っています。