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テイラー・シェリダンは、1970年アメリカ・テキサス州の生まれ。1990年代後半に俳優としてテレビドラマなどに出演、その後、脚本家に転身する。
「ボーダーライン」でアメリカ脚本家組合賞にノミネート、ネットフリックスのオリジナル作品でありながらアカデミー賞の脚本賞にノミネートされた「最後の追跡」(2016年)で、一躍、注目を集める。2017年には自ら脚本を書き、初監督した「ウインド・リバー」を発表、カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門で監督賞を受賞する。
いわばシェリダンは、いまアメリカで最もその才能を期待されている脚本家のひとりであり、監督でもある。そのシェリダンが再び脚本を担当したのが、出世作「ボーダーライン」の続編だ。ちなみに、この作品のアメリカでの原題は「Sicario: Day of the Soldado」で、あいかわらず「殺し屋」というタイトルが付いている。
脚本家は替わらないが、監督は前作のドゥニ・ヴィルヌーブから、イタリア人監督のステファノ・ソッリマに替わっている。ソッリマは、日本では昨年公開された「暗黒街」(2015年)で監督を務めているが、よくこの人材を探し出してきたなと思うくらい、適任だった。むしろ前作のヴィルヌーブ監督よりこのシリーズにはマッチしており、ヴィルヌーブ監督も「素晴らしい続編に圧倒された」とその演出力を賞賛しているという。
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「ボーダーライン ソルジャーズ・デイ」では、前作でほぼ出ずっぱりだったFBIのケイト・メイサーはまったく登場しない。物語の主役は、前作に登場したある人物に移っており、再度、メキシコの麻薬カルテル撲滅をめぐるストーリーから始まるが、またまた途中で様相は一変、「ボーダーライン」を彷徨う人間のヒューマンドラマへと展開していく。やはり一筋縄ではいかないのがシェリダンの脚本だ。
見応えある「フロンティア3部作」
シェリダンは、メキシコ国境が舞台の「ボーダーライン」、テキサス州で銀行強盗を繰り返す兄弟とそれを追うテキサス・レンジャーを描いた「最後の追跡」、ネイティブアメリカンが住むワイオミング州の雪深い土地で起こった殺人事件の真相に迫る「ウインド・リバー」を、「フロンティア3部作」と位置付けているが、この「ボーダーライン ソルジャーズ・デイ」は、それに続く新たな展開を示す作品となっている。
作品の最後では、続編の存在を思わせる場面も登場し、この「ボーダーライン」が、長大なサーガにもなる可能性さえ示唆している。いずれにしろ、これまでアメリカの辺境地帯にこだわってドラマをつくりあげてきたシェリダン、日本でつけられた邦題が、結果的にはネタバレを防ぎ、彼の作品の真髄を表しているのは、なんとも皮肉な現象だ。
年末年始でまとまった時間が取れたら、ぜひ、彼の「フロンティア3部作」を観ることをお勧めする。すべて、配信サービスでカバーできるはずだ。ハリウッド作品らしからぬ見応えある人間ドラマが味わえること必定。最後にシェリダン本人の言葉を紹介しよう。
「現代のフロンティア地域は、僕たちアメリカ人が何者なのかを雄弁に語ってくれる。アメリカは新しい国だ。ごく最近になって入植した地域であり、その入植と同化の結果が今日でもはっきりと存在していることがわかる。これまで映画では直視されてこなかったことだ。だからこそ僕はそれを模索したい」
連載 : シネマ未来鏡
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