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2018.12.14 06:30

音楽では稼げない、中国テンセントの音楽部門「TME」の現実

12月12日、TMEはニューヨーク証券取引所に上場した(Photo by Spencer Platt/Getty Images)

中国テンセントの音楽部門「テンセントミュージック・エンタテインメント(TME)」が12月12日、ニューヨーク証券取引所に上場した。同社の時価総額は213億ドル(約2.4兆円)に達したが、アナリストの間からは今後の先行きを危ぶむ声もあがる。

TMEの時価総額は、スポティファイの現在の時価総額233億ドルに匹敵するレベルに達した。しかし、iResearchのアナリストは「中国人は音楽に大した金額を支払わない。売上を伸ばすためには、音楽以外を強化するしかない」と述べる。

TMEの音楽ストリーミングアプリにはQQ Music(QQ音楽)やKugou(酷狗)、Kuwo(酷我)、さらにカラオケアプリのWe Sing(全民K歌)などがある。目論見書によると、同社は合計で8億人のMAUを抱えており、一日のアプリの利用時間は平均70分という。

売上を伸ばしエンゲージメントを高めるために、TMEは利用者にバーチャルギフトを購入させ、ライブストリーミングを行うパフォーマーらに贈らせている。We Singではカラオケを歌う友人に、投げ銭を贈る仕組みもある。さらに、WeChatで巨大なユーザーベースを持つ親会社のテンセントが、TMEのプロモーションを行うこともできる。

この戦略は、これまで一定の成果をあげており、直近の9カ月でTMEの売上は前年比46%増の19億8000万ドルで、利益は3倍以上の3億9400万ドルに達している。

また、売上に占めるバーチャルギフトやコインの比率は約70%に達している。しかし、TMEが提供する音楽サブスクリプションの月額費用は、わずか1.8ドルでしかない。

iResearchのアナリストは「TMEの成長率は低い水準にとどまる」と話す。TMEはプロモーションのために多くの資金を投じ、競合のライブストリーミングアプリのMomo(陌陌)やYY(歓衆時代)と戦う必要がある。また、バイトダンスが運営する短編動画アプリDouyin(英語名Tik Tok)との競争も激化しそうだ。

中国のスマホユーザーは音楽にはさほどの額を支払わないが、ライブストリーミングに関しては大きな成長が見込める。現状でTMEのアプリユーザーは平均で月額17ドル程度を、同社のソーシャルサービスやエンタメ系サービスに投じている。一方で、Momoのユーザーの月の支払い額は52ドル、YYのユーザーは25ドルの水準に達している。

「TMEが売上を伸ばせるのは、ライブストリーミングの分野だ。市場は既に成熟しており、利用人口の成長も限界に達しつつあるが、一人あたりの支払額はまだ成長の余地がある」と調査企業Blue Lotusのアナリストは話した。



編集=上田裕資

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