TMEの時価総額は、スポティファイの現在の時価総額233億ドルに匹敵するレベルに達した。しかし、iResearchのアナリストは「中国人は音楽に大した金額を支払わない。売上を伸ばすためには、音楽以外を強化するしかない」と述べる。
TMEの音楽ストリーミングアプリにはQQ Music(QQ音楽)やKugou(酷狗)、Kuwo(酷我)、さらにカラオケアプリのWe Sing(全民K歌)などがある。目論見書によると、同社は合計で8億人のMAUを抱えており、一日のアプリの利用時間は平均70分という。
売上を伸ばしエンゲージメントを高めるために、TMEは利用者にバーチャルギフトを購入させ、ライブストリーミングを行うパフォーマーらに贈らせている。We Singではカラオケを歌う友人に、投げ銭を贈る仕組みもある。さらに、WeChatで巨大なユーザーベースを持つ親会社のテンセントが、TMEのプロモーションを行うこともできる。
この戦略は、これまで一定の成果をあげており、直近の9カ月でTMEの売上は前年比46%増の19億8000万ドルで、利益は3倍以上の3億9400万ドルに達している。
また、売上に占めるバーチャルギフトやコインの比率は約70%に達している。しかし、TMEが提供する音楽サブスクリプションの月額費用は、わずか1.8ドルでしかない。
iResearchのアナリストは「TMEの成長率は低い水準にとどまる」と話す。TMEはプロモーションのために多くの資金を投じ、競合のライブストリーミングアプリのMomo(陌陌)やYY(歓衆時代)と戦う必要がある。また、バイトダンスが運営する短編動画アプリDouyin(英語名Tik Tok)との競争も激化しそうだ。
中国のスマホユーザーは音楽にはさほどの額を支払わないが、ライブストリーミングに関しては大きな成長が見込める。現状でTMEのアプリユーザーは平均で月額17ドル程度を、同社のソーシャルサービスやエンタメ系サービスに投じている。一方で、Momoのユーザーの月の支払い額は52ドル、YYのユーザーは25ドルの水準に達している。
「TMEが売上を伸ばせるのは、ライブストリーミングの分野だ。市場は既に成熟しており、利用人口の成長も限界に達しつつあるが、一人あたりの支払額はまだ成長の余地がある」と調査企業Blue Lotusのアナリストは話した。