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21世紀に入り、さらに加速度をつけて発達している科学技術。それを象徴する3次元プリンター、ドローン、自動運転車、ロボティックス、人工知能などの新たな技術。こうした最先端技術に支えられた機械文明は、これから人類に、何をもたらすのか。

そのことを考えるとき、古い世代には良く知られている、二つの漫画を思い出す。

一つは、手塚治虫の描いた『鉄腕アトム』。もう一つは、石ノ森章太郎の『サイボーグ009』。

どちらも、科学技術の発達と機械文明が生み出した二人のヒーローであるが、実は、この二人、本質的には全く違ったヒーローである。

なぜなら、鉄腕アトムは、どれほど愛らしい性格を与えられていても、やはりロボットであり、その本質は「機械」である。

これに対し、009は、最先端の科学技術によって人間の肉体を改造し、機械の力によって腕力や走力、視力や聴力などを圧倒的に高めたサイボーグであるが、その本質は、どこまでも「人間」である。

この違いを、ロボティックスの分野では、「ロボット・パラダイム」と「サイボーグ・パラダイム」と呼び分けているが、ロボット・パラダイムとは、基本的に「機械に圧倒的な能力を発揮させる」という発想であるのに対し、サイボーグ・パラダイムとは、「人間の能力を、科学技術と機械を使って、どこまでも高めていく」という発想である。

そして、実は、この二つのパラダイムの違いは、これからの科学技術と人間の関係を考えるとき、極めて重要な視点になっていく。

なぜなら、この「ロボティックス技術」と同時に、いま、人間社会に広がっていこうとしているのが、「人工知能技術」だからである。

この人工知能は、すでに、チェス、将棋、囲碁において世界チャンピオンや名人を打ち負かしていることに象徴されるように、いま、急速に、人間の能力を凌駕する発達を遂げている。

それは、ゲームの領域においてだけではない。ビジネスや学問研究の領域においても、これまで人間が担っていた仕事を代替するようになっている。

例えば、米国の金融業では、かつて600人いた株式トレーダーが、人工知能の導入によって2人になり、欧米の大手弁護士事務所では、契約書確認や法務調査などの仕事の多くが人工知能によって代替されるようになったが、専門知識と論理思考で仕事をしている弁護士や会計士などの「サムライ業」は、10年以内に半分が不要になると言われている。

さらには、「いま、どの道路を流すと客を拾えるか」「今夜は、どの地域で犯罪が起こりそうか」といったベテランのタクシー運転手や警察官の「勘」さえも、人工知能で代替されるようになっている。

このように、これからの時代、これまで人間が担ってきた仕事の多くが、人工知能によって置き換わっていくだろう。

文=田坂広志

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