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政府が提唱する「Society5.0」とは、どんな世界なのか。実現に向けた研究を行う金沢工業大学の中沢実教授が紐解く。


未来の世界で、コーヒーを飲んだとしましょう。すると、どの種類のコーヒーを注文した、どれくらいの量を何分くらいかけて飲んだ、どんな人と飲んだ……。こういった情報がすべてネットワークにビッグデータとして記録され、私たちはより良いサービスを受けることができます。次にコーヒーを飲もうと思った時、AIが分析した情報を受けて自分の好みに合ったカフェと簡単に出合えます。

未来ではスマートフォンやパソコン、センサーなどすべての「デバイス」が、ネットワークからフィードバックを受けて自動修正され、AIネットワークが構築されます。するとAIの思考と人間の思考の境目がなくなる。人間以上に人間のことを知るAIが出てくるはずです。ヒト、モノなど含めていろんなものがCognifyされていくんじゃないかと思います。

これはCognitive(認知)から派生した造語で、私は人間と機械が共存・共栄する意味で使っています。今はAIと言えば機械だけの世界ですが、より人との関連性が生まれるでしょう。その頃には、AIという言葉は消えているかもしれません。

政府は今年「Society5.0」として、日本が目指すべき未来社会の姿を初めて示しました。狩猟社会(Society1.0)、農耕社会(同2.0)、工業社会(同3.0)、情報社会(同4.0)に次ぐ「超スマート社会」とされています。ですが、私はこう思います。「いつまでも実現しないβバージョン社会」。要するに終わりがない、正解がない世界です。

いろんな製品やサービスも完成することはないと思います。すでにいくつかのネットワークで提供されているソフトウェア製品にはバージョンの概念がないものが出てきています。ハードウェアを購入したらソフトウェアは自動的にアップデートされていく世界です。Flow(流動化) がキーワードになります。例えば電子ブックが象徴的です。

ただ本を読みたいだけじゃなく、中身を他の人と共有したハイライトを見たいのです。本は完成品ではなく、情報を付加していくから意味があるようになります。

音楽も同じです。以前はCDを買ってアーティストの考えた曲の順番で聞くのが当たり前でしたが、今は一般のカスタマーがいろんなアーティストを混ぜこぜにしたリストを作って、聞くようになってきています。例えばリラックスできる音楽を自分で組み合わせて考えて共有する。このようにクリエイターとコンシューマーの概念が曖昧になります。

文=中沢 実

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