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次代に必要とされる企業を、VCがつくる

ポスト・メルカリ時代においては、ベンチャーキャピタルにも新たな姿勢が求められるようになっていきます。これまでのベンチャーキャピタルは、有望なスタートアップをいち早く見つけ、投資することが仕事の要だと言われてきました。しかし、これからの時代、有望なスタートアップが生まれてくるのを待っているだけでは成功確率は低いし、他のベンチャーキャピタルとの差別化も難しくなっています。

今後は起業家のインキュベーションまでがベンチャーキャピタルの仕事になってくるでしょう。そこでポスト・メルカリ時代のベンチャーキャピタルの役割について、僕からひとつの解として申し上げられるのは「探すのではなく、創る」ということですね。だ
 
人工知能やドローンといった最新技術を扱うのは得意な一方で、日本のベンチャーは「どうやって顧客に買わせるか」というビジネスモデルが弱い傾向にあります。

単に人工知能を使っていますよではなく、何を解決するために、どのような形で人工知能を使うのかをはっきり定めて、そのために洗練されたサービスを売り込める企業がスケールするはず。だからWiLではこれからの市場で必要となるサービスを逆算し、それを実現できそうなスタートアップをハンズオンで育てています。未来の社会がどうなるのか?どのような課題が生じるだろうか?という感性やイマジネーションが大切になると考えています。

自分より優秀な人間を躊躇せず雇え

少し話は変わりますが、最後に起業家の資質についても触れたいと思います。山田さんの「自分より優秀な人を積極的に雇う姿勢」は、すべてのスタートアップが見習うべきです。

経営者の多くは、自分より優秀な人材を雇おうとしません。なぜなら、一見自分がカッコ悪く見えてしまうし、多額の給料を出すことで自分の取り分が減ってしまうからです。会社の成長よりも自分がお山の大将でいることを優先してしまいます。

ところが、山田さんは人材への出資を惜しみません。高い給与を支払って元フェイスブック幹部のジョン・ラーゲリンさんを雇い、メルカリUSのCEOを任せました。また取締役社長兼COOの小泉文明さんにも、早くから日本国内の経営を一任しています。ここまで自社の発展にコミットしている人が、果たして国内にどれだけいるでしょうか。

WiLの投資先を見ても、ワンマンな経営者は短期的な爆発力こそあっても長期的には伸び悩むことが多い。どんなにすごい人でも、1日は24時間しかありませんからね。1人でできることには限界があります。

日本と比べると、アメリカの経営者は「自分がナンバーワンでなくても構わない、チームで大きな勝利を」と考える傾向にあります。この背景にあるのも、日本とアメリカのスタートアップ・エコシステムの違いですね。

スタートアップエコシステム全体、VC業界、起業家個人のそれぞれについて、ポストメルカリを生み出すために必要な要素を語ってきました。グロースステージの支援を手厚くして上場を急がない企業が増えること、VCがただ投資をするだけでなく、未来をつくりそうな企業をつくること、そして起業家は会社のために自分より優秀な人を厭わないこと。

繰り返しになりますが、いまのところポスト・メルカリ時代を代表するスタートアップは、思いあたりません。ですが、スタートアップがもっとビジネスとしてのシビアな目線を持ち、それを支えるエコシステムが整えば、きっと第2、第3のメルカリはきっと現れるでしょう。

文=野口直希 写真=小田駿一

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