今年3月に、テキサス州オースティンで開催されたサウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)映画祭で、ドキュメンタリー部門賞を受賞したこの映画は、中国のインターネット界のスターたちの狂気に満ちた生態を描き、その異様なカルチャーのルーツがどこにあるのかを探っている。
Hao Wu監督によるこの作品は、既に米国の映画批評サイト「Rotten Tomatoes」では98%とという高い評価を獲得し、ライブストリーミングに熱狂する若者たちの孤独や、金への執着などを通じ、現代中国の若者の姿を描いている。中国のライブストリーミングのトップスターたちは、月額で10万ドル(約1100万円)もの収入を得ている。
中国の動画ストリーミングブームの発端を作ったとされる企業が、広州市に本拠を置くYY(歓衆時代)だ。同社はサイト上で飛び交う現金と交換可能なバーチャルギフトを、出演者とシェアするビジネスモデルで、急速に規模を拡大した。同社CEOのDavid Liは、2005年にYYをゲームのポータル企業として立ち上げ、その数年後にライブストリーミング分野に進出した。
YYは2012年に米国のナスダックで上場を果たしており、出資元にはシャオミのレイ・ジュンのほかGGV CapitalやTiger Globalなどの大手ベンチャーキャピタルがそろっている。
その後、中国のデジタル業界は急激な進歩を遂げ、動画エンターテインメントの覇権はTik Tokなどの新興勢力が握っている。Tik Tokを運営する北京本拠のバイトダンスの企業価値は750億ドル(約8.3兆円)以上とされ、ウーバーを超える価値を誇っている。
Tik Tokのグローバルの月間アクティブユーザー数は、5億人に達したとされており、テンセントが支援する競合のKuaishou(快手)も現在2億4000万人の利用者を抱えている。
このトレンドに遅れまいとするフェイスブックも、独自の短編動画アプリLassoで米国の若いユーザーを獲得しようとしているが、Lassoの機能の大半はTik Tokの模倣であり、「中国をコピーする時代」の到来を象徴する結果となった。