シャンパーニュ・ルイ・ロデレールの匠の精神と最高峰のワイン造り

ルイ・ロデレールのフラッグシップ・シャンパーニュ、「クリスタル」


もしクリスタルを開ける機会があれば、フルートグラスではなく、やや大きめの通常のワイングラスで、抜栓してから、少しずつゆっくり楽しむことをお勧めしたい。時間とともにワインが開き、新鮮な果実から、ブリオッシュやパン、そしてホワイトチョコレートやキャラメルなど少し熟成した香りなど、次々と顔を出す様々な層を体験できる。

また、香りや味わいだけではなく、果実の凝縮度や、繊細で包み込まれるような柔らかい口当たり、最初から最後まで継ぎ目のない滑らかさ、ワインがなくなった後にも口の中に残る余韻にも注目したい。


メゾンのロビーにある、クリスタルを最初にオーダーしたロシア皇帝アレクサンドル2世の銅像

次の時代のルイ・ロデレールを見据えて

ルイ・ロデレールでは、同世代の2人のリーダーが描くビジョンと、日々の地道な畑仕事とワイン造りによる成果が、いま実を結んでいる。

ワインを取り巻く環境は刻々と変化している。気候変動のようなブドウ栽培に影響を与える環境の変化もある。消費者の嗜好にも流行りがあり、それに対応する必要もある。生産者たちは、自分たちのやりたいことに注力する一方、市場や消費者の動向にも目を向けなけばいけない。

ルイ・ロデレールでは、こうした変化の中、将来を見据え、様々な取り組みをしている。

例えば、将来の気候変動を考え、ブドウの木の仕立て方など、新しい栽培方法を実験しているが、これには、カリフォルニアといった温暖な気候の産地でワインを造ってきたこれまでの経験も活かされているという。また、一定の畑の区画からスティル・ワインを造り、シャンパーニュの個性を活かしたスティル・ワイン「コトー・シャンプノワ」の可能性も探っている。

さらに、長年取り組んできた持続可能なブドウ栽培においても、より明確で説得力のあるビジョンを示すためにオーガニック栽培の認証手続きに踏み出している。

2014年には、ドサージュ(追加砂糖分)ゼロの「ブリュット・ナチュール(Brut Nature)2006」をデザイナーのフィリップ・スタルク氏とのコラボレーションにより発表したが、2019年に発表予定の「ブリュット・ナチュール2012」では、また新たなアイデアを用意しているという。



さらに良いワインを作るために革新を続けるが、現在取り組んでいるプロジェクトが目に見える成果を出すのは自分たちの代ではなく、将来の後継者の時代かもしれない。ルゾー氏にとって、すべての判断基準は、「20年、30年後といった次世代のルイ・ロデレールを考えたもの」だ。

そう思うと、今私たちが口にするクリスタルといったシャンパーニュも、過去から現在に繋がる匠たちによって築き上げられた工芸品なのだと実感できる。

島 悠里の「ブドウ一粒に込められた思い~グローバル・ワイン講座」
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文・写真=島悠里

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