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ブドウ一粒に込められた思い~グローバル・ワイン講座

ルイ・ロデレールのフラッグシップ・シャンパーニュ、「クリスタル」

シャンパーニュは、長い歴史の上に築かれた工芸品だ。シャンパーニュ地方の人々は、泡のあるワインを生み出し、長い時間をかけて磨きあげ、比類のないスパークリング・ワインの産地としての地位を確立した。

シャンパーニュにはきらびやかなイメージがつき、お祝いや特別な場面に花を添えるワインとして認知されるようになった。今や世界中でスパークリング・ワインが作られているなか、シャンパーニュが別格を維持している背景には、作り手たちのたゆまない努力、また地域全体の発展を牽引するビジョンを持ったリーダーたちの存在がある。

そういった作り手の一つが、シャンパーニュ・メゾンのルイ・ロデレール(Louis Roederer)だ。プレスティージュ・キュヴェの「クリスタル」(Cristal)に代表される華やかなイメージがあるが、「革新(Innovation)、情熱(Passion)、匠の精神(Craftmanship)、リーダーシップ(Leadership)」を体現した作り手だ。

真摯なワイン造りと最高の結果を追求し続ける姿勢、そしてメゾンを率いる2人のリーダー。今回は、普段はあまり語られない、メゾンの背景を紹介したい。


フレデリック・ルゾー(Frédéric Rouzaud)社長(左)と最高醸造責任者のジャン・バティスト・レカイヨン(Jean-Baptiste Lécaillon)氏(右)

歴史、伝統、家族

ルイ・ロデレールは1776年に設立された、シャンパーニュの中でも古いメゾンのひとつだ。かつてはロシア皇帝のためにワインを造るなど、歴史にもその名を刻む。

現在では多くのメゾンが大手資本の傘下にあるのに対し、今でも家族経営を維持する数少ないメゾンでもある。2006年からCEOを務め、経営全体の指揮を執るのは、7代目のフレデリック・ルゾー氏。彼は「シャンパーニュの土地の個性を表現した、最高品質のワインを造ることは、代々家族に受け継がれているスピリッツだ」と語る。

また、ルゾー氏は、ルイ・ロデレールにとって、「家族経営の非上場企業であることの利点は大きい」と言う。長期的な視野を持った戦略を取れること、自分達の信念に基づいた機動的な意思決定ができること、マーケティングに傾倒することなく品質にフォーカスするという昔からの理念を維持できること。これらは、長年トップ生産者であり続ける同社のドライバーとも言える。

ルイ・ロデレールは、先代のジャン・クロード・ルゾー氏がいち早く、1970年代から他の地域のワイナリーへの投資を始め、今ではシャンパーニュだけではなく、カリフォルニア、ポルトガル、南仏、ボルドーなど世界中にワイナリーを持ち、ワインを作る。世界のワイン業界でM&Aが盛んな現在でも、ワイナリーや畑の買収に意欲的だが、ビジョンや価値観を共有できるところにのみ的を絞っている。


世界中で造るワインの数々

ブドウ栽培でのリーダーシップ

ルイ・ロデレールの原点は畑にある。最高品質のワイン造りは、材料であるブドウ栽培、さらにはブドウを育てる土作りから始まる。そして、その素材を活かす醸造技術も大事だ。ルイ・ロデレールのもう一人のリーダーが、畑からボトルまで、ワイン造りの全てを担う最高醸造責任者のジャン・バティスト・レカイヨン氏だ。

シャンパーニュ・メゾンでは、通常、最高醸造責任者はワイン醸造にのみ携わる。これには、シャンパーニュ地方では、栽培と醸造が分かれているという歴史的な背景がある。

シャンパーニュ地方では、約90%のブドウ畑を栽培農家が所有し、メゾンの畑所有は10%程度にすぎない。これに対し、シャンパーニュの生産量の80%はメゾンや協同組合が占める。すなわち、大手メゾンは、自社畑のブドウからだけではなく、契約農家からブドウを購入してワインを造るのだ。

文・写真=島悠里

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