12月9日、中国人工知能学会が江蘇省で「呉文俊・人工知能科学技術賞授賞式および2018年中国人工知能産業年会」を開催した。授賞式の“冠”となっている呉文俊氏は、昨年98歳で他界した中国AI研究の権威である。
そんな中国を代表するようなAIイベントに登壇した、工業情報化部傘下・中国信息通信研究院の副所長・張雪麗氏は、2018年上半期のAI分野へのグローバル投資額は435億ドルであり、そのうち中国が317億ドルだったと報告。実に、全投資額の4分の3以上を占めたと強調した。
張氏の報告によれば、今年9月時点で世界のAI企業の数は5159社であり、そのうち中国企業は1122社にのぼるという。なお、この中国AI企業数の統計には、香港、台湾、マカオなどを拠点とする企業は含まれていない。中国では、首都・北京にAI関連の企業が集中しており、グローバル市場を対象にした企業数は445社だと説明した。
併せて報告では、中国AI企業が特定分野の技術に集中し過ぎている点が課題として指摘されている。
富士キメラ総研の「中国の2018年AI関連投資、大手IT3社のBATを中心に4兆円規模へ」というリリースでは、「(中国では)2017年は、画像認識、音声認識、ビッグデータ、深層学習に投資が集中。最も多い画像認識は年間約90件、音声は50件前後の投資があり、投資額は800億元(約1兆3000億円)となった」と紹介されているが、中国側としては投資が同じような技術開発に集中する状況が克服されておらず、問題視されていることが見てとれる。
また、AIアプリケーションを開発する企業が多い反面、AIチップなど新たな技術を研究開発する企業がまだまだ少ないことが課題として挙げられた。
上述の富士キメラ総研も、2018年上半期に国有ファンドや民間ファンド、外資系ファンド、またBAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)などによる、中国国内のAI産業への投資が活発化していることを指摘。年間では2017年の約3倍となる約4兆500億円を見込んでいる。
「中国からの投資」という意味では国内企業に限らないだろうが、資金やデータ資源が豊富で、具体的なユースケースも続々と登場している中国市場でどのようにAIが開発されていくか注目度を高めていく必要があるかもしれない。
連載 : AI通信「こんなとこにも人工知能」
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