ビジネス

2018.12.14

日産の事件を「ジャパンブランド」崩壊の第一歩にしないために

Philip Lange / Shutterstock.com


英語には「Last Straw(最後のわら)」という表現がある。ギリギリのところまで重荷を負ったラクダは、その上にわら1本でも積ませたら参ってしまうということから、たとえわずかでも限度を越せば取り返しのつかない事になるという意味だ。

個人的には、60秒チャレンジこそがマクドナルドのLast Strawであったと思う。本当のところを言うと、ちょっとした混入は、昔から起きていたのだろう。

しかし、ちょっとしたいいものとしてブランドができていたため、安くなっても「マックだから品質は保証されているだろう」というイメージはどこかで保たれていた。だから、ちょっとくらいの異物混入があったとしても、人は騒ぎ立てなかったし、取引先の行状まで洗い出したりしなかった。

しかし、60秒チャレンジでSNSに拡散された歪んだバーガーが、「あんな商品を作るマックだから、こういうことが起きてもしかたない」と、ついにそのイメージを変えてしまった。そういうことであろうと思うのだ。

事実、今年の7月に、マクドナルドは再び食品表示法違反で行政指導を受けているが、業績は続伸中だ。再びブランドイメージが回復し、「マックだから品質は保証されているだろう」というイメージが再び勝ってきているのだと思う。

トヨタが優良企業であり続ければ

検査の不正が次々と明るみになって騒がれているのは、ジャパンブランドも同じだ。たぶん、昔からたくさんあったのだ。それが今、どんどん表に出つつあるのは、シャープやタカタや東芝など、「ものづくり日本」を支えていたはずの日本企業の経営不振や不正をきっかけとした凋落のせいだろう。

もはや、日本がものづくりの高品質が保証された国ではないということが次々と明らかになるこういった過程は、マクドナルドが値段をじわじわと下げていった過程にダブって見える。

先ほども書いたが、国のブランドイメージは、海外における日本企業それぞれのブランドイメージと切っても切り離せない。ゴーン氏の事件を生かすも殺すも、まずは当事者の対応次第であろう。まずは日産と三菱自動車、それに日本の司法には早急に世界の消費者が納得する説明と対応をお願いしたい。ことは対日本ではなく対世界なのだ。

そして、今や日本のものづくりの象徴となっているトヨタは、同じ自動車産業界にいる会社として優良企業であり続けることはとても大事だろう。

同時に、すべての日本のメーカーにもできることがある。今こそ「あれは日産といういち会社の事件で、日本企業はやっぱり世界で高品質な商品を提供するものづくり日本なのだ」と思わせなくてはいけない。ピンチは、チャンスでもある。日産の今回の事件を、ジャパン・ブランドのLast Strawにしてはいけない。

文=武井涼子

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