仏抗議デモと米GMの決断、共通点は「国民の痛み」無視する政府

Photo by Mustafa Yalcin/Anadolu Agency/Getty Images

米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)が下した「シボレー ボルト」の生産中止の決定と、フランスで燃料税の引き上げをきっかけに始まり、一部が暴徒化している抗議活動、「黄色いベスト」には関連性がある。それは、どのようなものだろうか。

答えは、どちらも「気候変動問題に関する政府の対応方針への抵抗」であるということだ。GMの決断が示すのは、自動車メーカーには今以上に、需要が少ないハイブリッド車を生産する余裕がないということだ。一方、フランスではエマニュエル・マクロン大統領が、中所得層を激怒させた燃料税の引き上げを断念するに至った。

原子力発電に頼る割合が高いフランスは、二酸化炭素排出量が隣国ドイツよりも少ない。それでも、マクロンと社会党のフランソワ・オランドが率いた前政権は、燃料税を標的にしてきた──そして恐らく、税率を引き上げすぎた。

日常的に地下鉄を利用しているパリ市民は、通勤の足を車に頼り、家計のやり繰りに苦しんでいる地方部の住民たちほど、痛みを感じていないのだろう。

化石燃料の「功罪」

ガソリン価格が比較的低い水準で安定していれば、電気自動車(EV)への切り替えはGMにとっては市場に売り込みにくい、減益にもつながりかねない方針となる。2009年に経営破綻し、消費者の信頼回復に向けた努力を続ける同社には、そのような方針を維持する余裕はほとんどない。

テスラ「モデル3」やアウディ「e-tron」などの最新のEVは主に、以下のような理由で生産されている。

・政府が内燃機関の使用を禁止した場合に向けての防衛手段となる

・テスラ車は比較的裕福な一部の層を対象に、その他各社は実用性の面でEVを購入したいと考える(テスラの顧客以外の)消費者層を対象にEVを提供する

・中国政府が化石燃料の使用を減らすことを奨励し、EV車の生産を義務づけている
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編集=木内涼子

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