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ESG活動を企業の「長期的な価値創造のストーリー」につなげるには? フィスコIR・中川博貴取締役がその本質を解説する。

30年間の企業経営を振り返ってどう思いますか。そして、これから30年間でどんな会社にしたいですか──。

意外にも、多くの上場企業の経営者がこの質問に答えられないという。あえて「30年間を振り返って」と聞くのは「自分の会社が何者なのか。これまで何を大事にしてきたのか。今後はそれをベースに何をしたいのか」を聞いているだけ。同時に、経営者としてリーダーシップを発揮し、いかに実現していくかを尋ねている。

ある会社の株価の話だ。過去10年間の株式のトレンドを見たときに、この会社の株式を私が1人の投資家として保有したとしても、株主である私の資産は増えても減ってもいない。実は、10〜30年というスパンで持続的に企業価値を向上させている日本企業は、全上場企業約3600社超のうち約100〜200社くらいしかない。

多くの企業は上場当初は高値でも、その後は中長期のユニークな戦略などを示せずに業績を大きく伸ばせず、株価は徐々に低迷し、底値にて横ばい推移になりがちだ。

2015年ごろからアベノミクスや経済成長戦略の一環で金融市場改革が行われ、企業統治の指針が定められた。こういった国の施策を背景に、上場企業と投資家が相互に協力しながら企業価値を高めていく「対話」を重ねていこうという動きがある。

今、経営者に求められているのは「中長期の視点への転換」ではないか。数年という短期的な視座ではなく、「10年、20年先の将来を見据えた経営を持続的に、どう取り組むのか。世の中の動向を読み解きながら、どう舵を取っていくのか」を考える「VISIONARY(見通す力)」が鍵となる。

近年はIRでも過去の業績に代表される「財務情報」だけでなく、将来を見通すに役立つさまざまな「非財務情報」が重視され、企業経営者の関心事に紐づく「ESG投資」が注目されている。

ESG投資では、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)を考慮する。先述の約3600社超のうち約400社が、財務情報と合わせてESG情報や中長期的な経営戦略も含む「統合報告書」を発表するようになった。

統合報告書を対話のきっかけに、投資家は企業価値を毀損するかもしれないESGリスクにも着目し、経営者とともに企業価値を創造していく一助を担う。具体的には、企業の戦略は何年ほどのスパンの大局観に立っているのか。変わりゆく事業環境に対し、企業という生命体をどのように変容させていくのか。そのために適切な経営資源配分と企業統治が行われているか。こういった点に注目している。

文=中川博貴(フィスコIR)

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