イントレプレナーは「相手を知ること」から始めよ


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──取り組みを理解してもらうために必要なことは?

まず、「相手にわかってもらおう」とすることをやめるべきです。それよりも、わかってほしい相手のことをよく知ることが大事です。

イントレプレナーは、自分のアイデアがどれだけ論理的に整合性があるかを示すことで説得しようと試みるけれど、大切なのは、相手の文脈の中に自分のアイデアの居場所をつくるようにすること。この部分でつまづく方は、相手を分かる必要はないと思っている節がある。なぜなら自分のアイデアが素晴らしいという自負があるから。

この発想にとどまっている人はアイデアマンではあるけれど、イントレプレナーではありません。



──では、イントレプレナーに必要な要素は?

2つあります。ひとつは「やりながら考える」。想定外の事態も歓迎できるか、ということです。もし新しいアイデアを提案したとして思ったような反応がない場合には、「『これは適応課題だ』ということが分かった」と捉えればいいのです。

適応課題とは、ハーバード・ケネディ・スクールのロナルド・ハイフェッツが示した概念で、答えのない複雑な問題のことです。往々にして変えようとすると誰かに痛みが生じるため、一筋縄では乗り越えることが難しいことを認識して挑む必要があります。

もうひとつは「孤立しない」。社内や社外に相棒を見つけるのがすごく大事です。進めていくなかでは当然衝撃もありますから、一緒に受け止めて対話できる相棒が必要です。

相手との間に今までとは違う関係性を築くことが対話です。優れたイントレプレナーはここが長けています。

──対話を増やすにはどうしたらいいのでしょう?

想定外のことが起きても自分の文脈で理解すると対話になりませんので、自分の解釈の枠を超えることが必要になります。

ハイフェッツの「最難関のリーダーシップ」に2つ象徴的なフレーズが出てきます。ひとつは、「観察・解釈・介入のサイクルを回せ」。よく見て、よく考えて、よく実践せよ。はずしたらもっと見よと。

もうひとつは「バルコニーに立て」。自分を含め皆ダンスフロアにいる。何かをやろうとしたときに俯瞰して見てみよということなのですが、踊っていることで誰かを殴っていないか? 邪魔になっていないか? と問うこと。つまり、誰がどんな顔をしているかなど見て、組織のなかで物事を進めていくべきではないか? という例えです。

これらはものすごく苦しい作業です。ある意味自分の失敗を見ないといけないからです。優れたアントレプレナー、イントレプレナーは自分の失敗をどれだけ発見できるかにかかっていると思います。
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文=佐藤奈津紀

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