メンバーと呼ばれる読み手の購読料によって成り立っている、この「広告なしメディア」は現在6万人以上の読者を持つ。購読料は月7ユーロもしくは年間70ユーロというオプションが選べる。
人口約1700万人のオランダを拠点に、オランダ語を中心に発信してきたコレスポンデントは、徐々に英語記事を増やしてはいたが、いま米国を拠点に本格的な英語化とグローバル展開を進めるべく、新たなクラウドファンディングに挑戦中だ。今週の金曜日、12月14日までに250万ドル(約2.8億円)の調達を目標としている。
「ニュース速報」に対する挑戦
コレスポンデントは、ロブ・ワインベルグ(Rob Wijnberg)とヘラルド・ドュニンク(Harald Dunnink)が2013年9月に創設した。ワインベルグは、コレスポンデント創設前、オランダの全国紙「NRC Handelsblad」の朝刊の編集長を務め、高学歴の若者にターゲットを絞った戦略で8万人の購読者を獲得した実績を持つ。
彼のサイトにある自称の肩書きは、ジャーナリストではなく、哲学者・パブリシストだ。共同創業者のドュニンクは、アムステルダムに拠点を持つデザイン会社「モンカイ(Momkai)」の創業者兼クリエイティブディレクター。
コレスポンデントの特徴的な要素である哲学性とデザイン性は、この2人の共同創業者あってこそかもしれない。ワインベルグは、「WIRED」日本版のインタビューで3つの哲学について語っている。
その1つは、ニュースを再定義することだ。これは、コレスポンデントのウェブサイトにある10の原則の一つ目に掲げられている、既存のニュース速報に対する挑戦でもある。今日起きたセンセーショナルな出来事ではなく、毎日起きていることの背景にある基礎構造に着目するというのが基本姿勢だ。
サイトには、毎日5つの記事がアップされる。従来のメディアのように政治、外交といった括りはなく、内容は、記者(コレスポンデント)の個人の興味が基盤となった世界の主要課題が深堀されたストーリーだ。
トピックの根本に迫る記事は、一つ一つが長めになる。ウェブ上でロングストーリーを読者に読んでもらうために、ウェブデザインには読みやすさを重視した配慮がなされている。例えば、ハイパーリンクは、右端にインフォカードとして表示される。コレスポンデントのスタッフや記者は、すべてドュニンクの手書きのイラスト似顔絵で表示され、それ自体がアイコニックなブランド要素の一つでもある。
広告が表示されないことは、読者に快適な体験を提供するために、もっとも重要なことだ。「広告なし」の原則は、哲学、デザインのどちらにも関連する同メディアのアイデンティティの一つといえる。