デジタルトランスフォーメーションを牽引するCxO最前線


須川:日本の場合、IoTは要素技術として使われていることが多い。それがサービスとして、または日本が主導しているイメージが持たれていないのが実情ですよね。

石黒:確かにそうですね。政府関係の会議でも、日本はB2Bが強いという話が出ていました。アジア諸国にいくと、交通インフラがなく渋滞が深刻化しているので、鉄道が必要とされていますよね。鉄道開発の仕事を中国企業も受注しているが作りきれないケースが増えています。だから、日本企業の技術力が再確認されていると思います。

しかし、このコアの技術だけでなく、それにサービスを組み合わせた形で輸出するのは面白いと思います。過去にJR東日本が、交通系ICカード「Suica」の乗降履歴を日立製作所に販売し、利用者やマスコミから大きな反発を受けたことがありますが、私はこれは残念だと思っていて、電車+行動データでパーソナライズされたお店のリコメンデ―ションなどが提供できたら、生活者は喜んでくれると思います。海外でも同じです。


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岩佐:「Suica」は分かりやすい例ですね。改札をただ自動化すれば良いわけではなく、仕様書をもとにこちらを速くするとこちらが破綻するとかややこしいシステムを擦り合わせて出来ていてまさに日本人が得意とするところですよね。

日本は先ほどの「Suica」のような高度な技術の擦り合わせを輸出して行くところにチャンスがあると思います。但し、ここが儲けどころだとグーグル、アリババも気付いているので、日本企業ものんびりはしていられないでしょう。

技術があるのにプラットフォーマーになれない日本

石黒:データが企業の勝敗を分けるので、アメリカや中国の企業はまずは面を取ります。残念ながら、日本企業は面を取るのが苦手ですね。

須川:技術はあるのに面は取れないんですね。グーグルの検索技術のベースとなるコア技術は、日本も持っていたんですよね。

石黒:そうでした。私がパナソニックGGの検索エンジンをYahoo!に売って、Yahoo! JAPANが直ぐに立ち上がったんでした。

須川:現在のAIがまさにそのような状態にありますね。ディープラーニングの基礎となる技術は、日本でもすでに80年代に発明されていたのに、なんで負けちゃうのか? サービスデザインが弱いんですよね。

岩佐:ゼロイチが生まれづらい国なんで、そっちに特化するのがよいのか疑問に感じます。スタートアップへの投資をみていても分かります。突拍子もない事業や企業に投資している事例は他国の事例などと比べると少ない。

国民性という意味で面白いのは、中国の小売り大手アリババが人工知能(AI)で都市を管理統制している「シティブレイン」というのがあるんです。杭州市の交通渋滞に着目し、交通局や公共交通機関、マッピングアプリ、そして膨大な数の監視カメラから取得したデータを利用し、杭州市の信号機つきの交差点104カ所を管理したところ、最初の1年間で対象エリアでの車の走行速度が速くなり渋滞が緩和されたそうです。

中国は国や市町村のレベルで先進技術を積極的に取り入れているので脅威ですね。日本も多少不利益になろうとも自動運転を解禁して技術を磨き他国に売るような思い切った施策ができると変わってくると思います。

日本メーカーは「コト消費」を実現できるか?

石黒:今の自動運転に絡んだ話で、ここ数年、自動車などのモノを所有することに幸せを感じない人が増え、価値観に変化が起こっています。コト消費が進むなか、家電メーカーはどう変わっていくと思いますか?

岩佐:家電メーカーの立場でいうと、“モノ”を売りきるモデルはどんなに頑張っても利益率5%を超えるか超えないぐらいのラインでしか勝負できないため、継続が難しいと痛感しています。そのため、藁にも縋る思いで“コト”消費にシフトしていきたいのですが、ものづくりが体に染みついてしまっているので、なかなか難しいんです。

確実に“コト”消費は今後、更に加速していくということはみんなわかっている。でも、メーカーはもう少し美味しい炊飯器の製造は出来るんですが、米を食べるという経験をサブスクリプションモデルでコト消費にするんだ、炊飯器は無料でレンタルにすればいい、と言った瞬間、思考停止に陥ってしまうんです。

例えば、炊飯器を製造しているとあるメーカーが、前述のサブスクリプションモデルをはじめようとすると、一旦、炊飯器の売り上げもサブスクリプションの売り上げもゼロからのスタートになるし、数年後にサブスクリプションモデルが今の炊飯器の売り上げより上がっているかどうかなんて誰も分からない。それが怖くて踏み出せず、炊飯器を買ったら追加50円払うことで毎月レシピが届くなんていう、アドオンにしかならないモデルになってしまうんです。

須川:そういえば、パナソニックGGは定期的に生コーヒー豆が届く焙煎機を販売していますよね。

岩佐:これはまさに先ほどの炊飯器と同じパターンなんです。焙煎機、幾らすると思います?もし、ネットイヤーグループがやるとなったら、焙煎機は無料または9800円ぐらいの激安にしますよね?

岩佐:なんと、十万するんです!少なくともVCにこのビジネスプランを持って行ったら、彼らは「9800円で撒こう!」とか「最初の2000台は無料にしよう!」とか言いますよね。

須川:ネスレのネスプレッソはそうしてますよね。コーヒーなどのフレーバーをサブスクリプションモデルで買ってもらう。

文=石黒不二代

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