ビジネス

2018.12.10

なぜアフリカでモノづくりに挑むのか? 日本人起業家母娘が目指すもの

日本から遠く離れたウガンダでバッグブランドを手がけるのが、仲本千津だ。銀行勤務、アフリカ事業支援のNGOを経て、現在の彼女が目指す先とは。

静岡出身の起業家母娘が仕掛ける、ウガンダ発のトラベルバッグブランド「RICCI EVERYDAY(リッチー・エブリデイ)」。2015年の創業からわずか3年で急成長。

17年11月「第6回DBJ女性新ビジネスプランコンペティション」(日本政策投資銀行主催)事業奨励賞を受賞、17年12月「日本イノベーター大賞(日経BP社主催)」特別賞受賞、2018年1月「CHIVAS VENTURE(シーバス・ベンチャー)」世界大会の日本代表者選出など、受賞歴も輝かしい。

その活躍を複数のメディアが取り上げ、日本全国の百貨店で定期開催されるポップアップショップには新規客やファンが駆けつける。RICCI EVERYDAYの強みの源泉はどこにあるのか。

RICCI EVERYDAYが生産拠点と店舗を構えるウガンダの人口は約41万人。面積は約24.1万キロ平方メートルと、日本の本州にほぼ近いサイズだ。ケニア、南スーダン、コンゴ民主共和国、ルワンダ、タンザニアと国境を接する。

平均年齢の中央値が16歳という若齢社会。IMFが発表した17年のGDP成長率は4.4%。世界銀行のデータによると、一人あたりのGDPは約580米ドル(約65000円)。

同行が毎年発表する、世界の190カ国対象のビジネス環境の国別ランキング「Doing Business 2018」の順位は122位。サブサハラ・アフリカ地域の48カ国の中では13位。同地域の上位には、モーリシャス、ルワンダ、ケニア、ボツワナ、南アフリカなどがランクインする。

人材を含むリソースの現地調達が鍵

RICCI EVERYDAYのCOO、娘の仲本千津は、カンパラに拠点を置きながら、日本にも頻繁に帰国し、CEOである母親の仲本律枝が担当する営業や販売業務、プレス対応などを共に行う。今回、現地取材を行った9月上旬も仲本の帰国期間中。逆に、現場の上司、仲本が不在という状況だからこそ、同社の強みを垣間みることができた。

取材に同行してくれたのは、ウガンダ人フォトグラファーのJeanDavisと、カンパラ在住の日本人インターン、タケウチ・フミカ。専属ドライバーのIssaがカンパラに点在する各拠点を回ってくれた。

待ち合わせは、ダウンタウンの南東に位置するムエンガ(Muyenga)地区にあるゲストハウス。仲本の事前情報によると、駐在の米国人が多く滞在している地域。欧州系の駐在外国人が多く滞在しているのが、ダウンタウンの北東に位置するコロロ(Kololo)地区。同社は、ムエンガとコロロのそれぞれにショップを構えている。今回、現地日系企業COTS COTSが手がける日本食レストラン内に、フラッグシップ店舗としてオープンしたショップがあるのがムエンガ地区だ。


ムエンガ地区の大通り、タンク・ヒル・ロードに面した建物。通りにはカフェや輸入食品店、スーパーやレストランが入ったモールなども並ぶ

フォトグラファーのDavisは、1989年生まれの28歳。フリーランスとしてクライアントワークをこなす。RICCI EVERYDAYでは、宣材写真などの撮影を行うほか、特に仲本が不在の間、同社のマネジメントスタッフとして輸出業務と資材調達も担当。

彼は2017年の3月に同社スタッフとして採用されているが、COO仲本も一目おくキーパーソンだ。レスポンスの早さと、自ら考え提案する力が、他のウガンダ人とは違う点だと仲本は分析する。今回の撮影や取材も、彼の積極的な提案や協力があったからこそ、スムーズに進んだ。
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文=ナカタマキ 写真=ジャン・デイヴィス

この記事は 「Forbes JAPAN 新しい現実」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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