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「これまで勤めていた職場に比べて、労働環境が大幅に改善した」と嬉しそうに話す、生産管理長のスーザン

工房のスタッフたちは、COO仲本のことをマダム・チズと呼ぶ。従業員と雇い主というだけではない、家族のような信頼関係が構築されているのだ。スタッフ同士の関係性も近い。仲本は出張などで工房を外していることも多いが、オンラインのやりとりで、スーザンに遠隔的に指示を出し、工房オペレーションを進めているという。

訪問時は、資材調達を待っているタイミングで、ゆったりとした時間が流れていた。しかし繁忙期は、この13人のスタッフが週約150個のペースでバッグを生産する。現在工房スタッフは総勢18名。13名の作り手に加え、店舗スタッフ4名とマネジメント担当のDavisだ。3平方メートルの部屋で、4名体制での開始時から3年で拡大。2部屋アパートの工房を経て、現在の工房は3ヶ所目だ。

アフリカ発のブランドが必要な理由

アフリカ、もしくは途上国でのモノづくりというと、日本を含めた消費者は大抵その品質に関して不安に感じるようだ。日本でよく知られている途上国発のブランドというと、バングラデシュなどで生産を行うバッグブランドMotherhouseがある。アフリカだと、エチオピアで高級シープスキンを利用したバッグの製造販売を手がけるandu ametが代表的だ。

COO仲本は、創業以前andu ametのプロボノスタッフとして経験を積んだ。こうしたブランドも、RICCI EVERYDAYも、日本の厳しい消費者の期待に応えるために、職人のトレーニングや品質検査・管理には特段注力している。

一方、アフリカという文脈におけるブランド構築の意義は、先進国の消費者にとってだけのものではない。ブランドは、ウガンダ人やアフリカ人にとっての誇りの源泉になりうる。

植民地支配、援助対象という歴史的歩みの中で、アフリカ人は文化的アイデンティティの源泉を奪われてきた。資源や農業が中心で、産業化が遅れ、多くの消費財を輸入に頼っている国が多い。自国でモノづくりができたとしても、アフリカ産のモノに対して、アフリカ人自身も信頼していないという話は、南アフリカやケニアなどでも耳にする話だ。仲本の話によると、ウガンダ人も例外ではない。


直営店1号店のショップはおしゃれなオープンエア・カフェに隣接。カフェでは定期的にファーマーズ・マーケットやファッション・マーケットも開催される

RICCI EVERYDAY直営店の存在意義は、こうしたマインドセットを打破することでもある。直営店に商品を買いに来る外国人もウガンダ人も、同社の商品がウガンダで作られたことに驚くという。自国で高品質なものが作られるということ、そしてそれが日本で販売されている事実に驚くそうだ。

コロロ地区にある直営店では、自社商品だけでなく、同社がキュレーションした様々なMade in Ugandaブランドも扱う。クリエイターたちのモノづくりは、自身と自分のカルチャーに対して誇りと自信を持つためのプロセスでもある。工房スタッフも、自分たちが作ったものが日本で販売されている様子を画像などで目にし、非常に満足しているという。

世界中にモノが溢れる中、モノづくりを続ける意義があるとしたら、モノづくりが人間の尊厳につながるからかもしれない。アフリカのモノやサービスがもっと世界に流通することは、アフリカの経済成長を促進するだけでなく、アフリカ人の誇りと自信へとつながり、若いアフリカがもっと世界での活躍の場を広げていくことにつながるのだ。

文=ナカタマキ 写真=ジャン・デイヴィス

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