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旅から読み解く「グローバルビジネスの矛盾と闘争」

courtesy of what3words

「わきみず・めざし・いなかみち」。このランダムな3つの単語の組み合わせが、実は筆者が今執筆しているロケーションを表す「住所」だ。

この変わった「住所」は、英国ロンドンに本社を持つスタートアップ企業what3wordsが開発した、新しい位置情報テクノロジー。全世界を57兆個の正方形に分割し、ランダムに割り当てられた3つの単語で特定の3メートル四方の場所表すという、今までになかったシンプルな住所の仕組みである。

そのwhat3wordsが11月上旬、ソニーのコーポレート・ベンチャー・キャピタル「ソニーイノベーションファンド」から資金調達を受けたという連絡が入った。同社のプレスリリースによると、ソニーは、機械に正確に位置情報を音声入力することができるwhat3wordsの技術の、自動車分野など様々なデジタルプラットフォームでの活用の幅に期待しているようだ。

きっかけは音楽業界での経験

連絡をくれた同社の共同創業者兼CEOのクリス・シェルドリックは、昨年8月、タンザニアのアルーシャで開催されたTED Global会議に登壇していた。国連の推定によると、世界の約40億人もが、通り名や番地といったいわゆる住所がない地域に暮らしているという。住所が特定できないと、様々な行政や民間のサービスへのアクセスが限られるだけでなく、法律上、存在しないことにもなりかねない。

what3wordsはこうした課題を解決する画期的なアイデアだが、シェルドリックの発想のきっかけは、実は欧州などの先進国での音楽業界での経験にあったという。彼は10年間ほど、バンドのブッキングなどに携わっていた。

「あまり知られていませんが、音楽業界の関係者は、日々住所を巡って苦労しています。ミュージシャンから機材を持ち込むプロダクション会社まで、なぜだか必ず道に迷っています」と彼は言う。

関係者が全く別の場所にいってしまったり、広い会場で特定の場所を指定することが難しかったりという経験が、既存の住所システムを代替するアイデアの発想に至ったのだ。

既存の住所システムでは正確性にかけるが、GPS座標は複雑すぎる。シェルドリックが知人の数学者を話しあった結果、辞書にある単語の3つの組み合わせで、57億個の3メートル四方のグリッドをそれぞれユニークに特定できることがわかった。

TED会議で紹介されたシェルドリックのエピソードは、音楽業界での話だが、これは実はわたしたちにとっても身近な「不便さ」だ。日本など、インフラが整備されたいわゆる先進国で生活していても、待ち合わせの相手や手配したウーバーを見つける際に、ほぼ必ず「ラストマイル問題」が発生する。

つまり、最終的に目的の相手と出会うためには、電話をかけたりする必要がある。what3wordsは、こうした潜在ニーズに対応する新しいソリューションだ。



シンプルなしくみと多言語対応でグローバルに拡大


現在、what3wordsが提供する住所(3ワードレス)は、26の言語に対応している。欧州言語だけでなく、モンゴル語、東アフリカのスワヒリ語、南アフリカのコサ語やズールー語などをカバーしているのも特徴だ。

同社は、2013年にロンドンで設立され、現在はイギリス、アメリカ、南アフリカ、モンゴルに事務所を構える80人以上のチームへと成長した。

文=MAKI NAKATA

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