宿題はタブレットで配布、スマホで提出 ブラジル郊外の公立高校

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2015年に行われたPISAという15歳児の学習到達度を測る調査(全72カ国・地域が参加)でブラジルは、科学63位、読解59位、数学65位と惨憺たる結果だった。日本は科学2位、読解8位、数学5位だ。また、OECDの統計によれば、ブラジルの25歳〜64歳の人口の内、大卒人口比率は14.79%と、調査対象44カ国中42位だ。日本は51.44%で3位である。

基礎学力を身につけられずに大きくなった子供たちが、いつまでも貧困から抜け出せなかったり、薬物に手を出してしまったり、犯罪を犯したりしてしまうのはブラジルの課題だ。ブラジルでは教育問題が医療問題と並んで最重要課題とされ、大統領選挙の度に、どの候補も教育改善策をアピールしている。

教育水準の高い日本の将来も安泰ではない

しかし、彼らは日本のように、立ち止まってはいない。公立高校の設備が限られた状況下であっても、子供たちの教育環境改善のためにテクノロジーを積極的に取り入れている。

アマゾンの奥地の公立学校で、大学に進学することすら考えていなかった生徒が、学校に導入されたオンライン教材のおかげでサンパウロの人気講師の動画授業を受けられるようになり、一流大学に合格したといった事例も出てきている。彼らは着実に改善に向かっている。

前回までに、ブラジル人は幼少期から会話を通じて自己表現力を学び、人生を楽しむ力を身につけていることを述べてきた。現在のブラジルは、基礎学力の向上が課題ではあるが、テクノロジーの活用により基礎学力の習得がどんどん効率化されているのは事実だ。日本人が苦手な自己表現力を持ち合わせているブラジル人が、近い将来、基礎学力を向上させた時、これからの社会を生き抜く強い力を手にしているだろう。

日本はこのままで良いのだろうか? 日本には高水準の教育モデルが完成しているという自負があり、従来型の教育方法のままでよいという考え方が多い。しかし、この教育モデルは20世紀型の工業社会における成功例であることを忘れてはならない。21世紀に通用するといえるのか。変革に対して私たちが及び腰になっているうちに、日本の子供たちが世界から取り残されてしまうことはどうしても避けたい。

次回は、基礎学力を習得し、さらに自己表現力も身につける、これからの教育について紹介する。

連載 : ブラジルに学ぶ「幸福」をつくる教育
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文=稲田大輔

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