ビジネス

2018.12.09

韓国系移民2世、テック業界の「亀」の急がない戦い方

エアテーブル共同創業者 ハウィ・リウ


投資家からの注目も集める。2018年3月、エアテーブルはCRV、キャフィネイテッド・キャピタル、スロー・ベンチャーズから5900万ドル(約67億円)を調達。さらに同年10月には、ベンチマーク、スライヴ・キャピタル、コーチュー・マネジメントから1億ドル(約114億円)の出資を受け、企業価値は11億ドル(約1250億円)になっている。

コーディング不要なソフトウェア製品を提供するベンダーは、エアテーブルだけではない。イントゥイットからスピンオフしたクイック・ベースも、同様の売り文句を使用している。しかし、エアテーブルを世界中のデータ処理市場へ広く浸透させたい、というリウの夢は止まらない。

「エクセルやグーグル・スプレッドシートの代替品を開発していると思われているかもしれない。しかし、私たちは第2のマイクロソフトやアップルを目指している」とリウは言う。あらゆるビジネスに適用可能なDIY方式のカスタム・ソフトウェアを、安価かつ迅速に構築するソフトウェア版レゴ・ブロックを提供する同社に勝ち目はある、と彼は確信する。

「結局私はスタートアップの道を選んだ」

中国育ちの韓国人を両親に持つリウは、テキサス州カレッジステーションで育った。彼の父親は、テキサスA&M大学で生化学の博士号を取得している。中国でエンジニアをしていた母親はマクドナルドの最低賃金で働き、洋裁の仕事もしていた。

「母はいつも両手を血だらけにして帰宅した」とリウは振り返る。「それでもがんばって私に数学、リーディング、美術工芸を教えてくれた」という。彼女はリウに、スティーヴ・ジョブズやビル・ゲイツに関する本を買い与えた。

「当時はマイクロソフトがNo.1企業で、ビル・ゲイツが世界一裕福な人間だった。彼の本は4冊ぐらい読んだと思う」

13歳の時、リウは父親の書斎に未読の教則本があるのを発見し、C++のコーディングを独学で修得した。16歳でデューク大学へ進み、2009年に機械工学と公共政策の学位を取得。その後、サンノゼのアクセンチュアでソフトウェア開発の職を得た。

当時の給料は、両親2人分を合わせた金額よりも多かった。しかし出勤初日の前夜、彼は迷い、結局出勤しなかった。「思い切った決断だった。金銭的に頼る当てもなかった。でも結局私はスタートアップの道を選んだ」

リウは、メール、フェイスブック、ツイッターからメッセージを収集するEtactsという会社を4人で立ち上げた。2010年、ベンチャーキャピタルYコンビネータからの出資を受けた。同年後半、彼はEtactsをセールスフォースへ売却し、高額の給料とチャット製品開発の仕事を得た。リウにとってセールスフォースでの人間関係や給料は満足の行くものだったが、再び何か新しいことを始めたくなった。
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編集=岩坪文子

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