ブルームバーグによると、アップルの5G対応の遅れの背景には、クアルコムとの確執がある。アップルはクアルコムとの特許料をめぐる争いで和解を拒否しており、通信モデムの供給に関しては、インテルに頼っている。しかし、インテルは5G通信モデムの開発において、クアルコムに大きく遅れをとっている。
筆者はアップルとクアルコムとの間の確執が、アップルに大きなダメージを与えると今年8月に指摘していた。その脅威がいよいよ差し迫ってきたのだ。
しかし、一体なぜ5G対応がそれほど重要なことであるのかを、少し説明してみよう。
モバイルの通信規格の進化をふり返ると、これまでの3Gや4Gの場合は通信キャリアの回線の整備が緩やかに進んだため、最新の規格に即座に対応しないことはさほど問題にならなかった。アップルは3Gや4Gの対応においても、競合に大幅に遅れをとっていた。
しかし、5Gにおいては状況が異なっている。世界の主要キャリアは5G対応を急速に進めており、カバーエリアも劇的なスピードで進むことが予測される。
5Gは非常に高速で安定したインターネット接続を可能にし、家庭のブロードバンドを置き換え、スマホの利用方法を変えるポテンシャルを持っている。しかも、その普及はここ数年で急速に進むのだ。
しかし、メーカー側は5G対応に際し、追加のコストをかけねばならない。5Gチップを搭載するにあたっては、チップメーカーに追加のライセンス費用を支払う必要がある。
今年8月に5Gの特許を持つエリクソン、クアルコム、ノキアの3社はライセンス料を公開したが、VentureBeatの試算では端末1台あたりの5G対応による追加コストは21ドルにもなるという。
この追加コストは安価なアンドロイド端末であれば、値上げに踏み切ることで吸収可能だ。しかし、既に高すぎる価格設定で批判を浴びているアップルは、さらに苦しい立場に追い込まれる。
アップルに残された選択肢はさほど多くない。5Gの普及は消費者のアップルへの関心が、大きく薄れ始めたタイミングで進む。アップルはこのトレンドに2020年の後半になってようやく追いつくが、同社は5G対応でさらに値上げに踏み切る必要がある。
先日は、アップルが次期iPhoneで指紋センサーの復活を検討しているとのニュースが浮上した。同社は旧世代のテクノロジーを再投入することで、最新のテクノロジーに対応できない現実を、覆い隠そうとしているのかもしれない。