アップル社内では10月以降、マーケティング担当者の配置転換も行われ、売上回復に向けたプロジェクトが始動したという。この動きが始まったのは、iPhone XSが発売されてから約1カ月の頃で、iPhone XRが市場に投入されるタイミングだったと、内部事情に詳しい関係者は述べている。
Gurmanによると、この人物は匿名を条件に取材に応じたが、社内の状況を描写するにあたりfire drill(火災訓練。緊急の仕事の意味も)という用語を用いたという。さらに、売上が当初の想定を下回っていることを認めたという。
11月28日、アップルは米国で旧型機種の下取りと引き換えに、大幅な値引きを行うプログラムを始動させた。iPhone8の場合は、従来の下取り価格は275ドルだったが、現在は300ドルまで増額されている。iPhone6でも150ドルで下取ってもらえる。
アップルはサプライヤーらに対し、生産数の削減を通達した一方で、消費者に対しては大幅な値引きを行い、なんとか売上を立て直そうとしている。
Gurmanはツイッターの投稿で、アップルの下取りプログラムの広告「iPhone XRが499ドルで」の画像を掲載し、「今までアップルがこんな手に打って出たことがあっただろうか。当初の販売価格より300ドルも安くしている」と述べた。
今年も残り少ないなかで、アップルがこれ以上の値下げ措置を行うとは考えにくい。一方で、ティム・クックらは長期的には端末の販売ではなく、サービス部門の収益を伸ばす未来を描いている。
しかし、サービス部門の収入が伸びなかった場合、アップルは端末の売上低下を耐え忍ぶことになるのだろうか。もしくは次期iPhoneの価格を大きく引き下げる決定を下すだろうか。
端末が売れないとなれば、サービス部門の収入を維持するのは難しい。また、価格の引き下げは、これまでの戦略が誤りだったことを認めることになり、これも避けたいところだ。
iPhoneが今後、大きく売上を回復する見込みはかなり低い。今年の新モデルの広告の出稿ラッシュも一段落した今、アップルは前年並みの販売台数と利益の確保にむけて全力で取り組むしかないのだ。iPhoneのハイエンド端末としてのブランドイメージを損なわないよう、注意深くそれを行うしかない。