ビジネス

2018.12.07

創業200年のブルックス ブラザーズが「着古されない」理由

(Photo by Jesse Grant/WireImage for Retail Brand Alliance/Brooks Brothers)

米国の歴代大統領のスーツを手掛けてきた米ブルックス ブラザーズは創業200周年を迎えてなお、古びることなくレレバンス(適切性)を維持している。

同社は現在、人工知能(AI)を使ってビジネスプロセスの最適化や自動化を支援するイタリアのORSグループから協力を得て、各店舗の在庫管理や、売上高に対する販促活動の効果の分析などを行っている。

さらに、ORSが米マサチューセッツ工科大学(MIT)の教授らと開発を進めているブロックチェーン技術を、自社のサプラインチェーン全体に導入する計画だ。「エンドツーエンドでAIを活用した」プラットフォームを導入する業界初の企業になるという。


ブルックス ブラザーズCEO、クラウディオ・デル・ベッキオ

独占インタビューに応じた同社のクラウディオ・デル・ベッキオ最高経営責任者(CEO)は、「業界ではよりパーソナライズされたアプローチを取る傾向が明確になってきている」として、次のように語った。

「当然ながらファッションは変化している。あらゆる変化が加速度的に進んでいる。変化する業界により迅速に対応する能力が、ますます重要になっている」

「企業が主導するマーケティングは、大幅に効力を失っている…私たちは、顧客が何を求めているかを予測する必要がある。AIは、そのためのソリューションだ」

業績は好転

現在の戦略によって、同社はオンライン注文については店舗から即日出荷・配送することを実現。また、需要のある商品の在庫を常に確保し、売上高を伸ばしている。

デル・ベッキオは、需要を適格に把握することの重要性を理解している。イタリアのアイウェア大手ルックスオティカ グループの創業者であり、2001年にブルックス ブラザーズを英小売大手マークス&スペンサーから買収したのは、彼の父親だ。

変化に対応している同社の取り組みは、効果を出し始めている。2年連続で減少した前年比での売上高は、今年は増収に転じた。米国以外の市場と、オンラインでの売上高が2桁台で伸びているためだ。

非公開会社である同社の年間売上高は、およそ12億ドル(1350億円)。その約30%ずつを、オンライン販売と国外の市場で稼ぎ出している。大手百貨店などにも出店しているが、自社店舗とオンライン販売から売上高の90%以上を得ている。

同社は現在、米国内と外国にそれぞれ約300店舗ずつを展開する。AIの活用によって在庫管理の効率化が実現できることから、今後は店舗を現在より小規模にした上で、出店数を増やしていく計画だ。
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編集=木内涼子

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