ブッシュ夫妻の死から考える「タコツボ症候群」と遺産計画

バーバラ夫人とジョージ・H・W・ブッシュ元米大統領(Photo by Ida Mae Astute /ABC via Getty Images)

ジョージ・H・W・ブッシュ元米大統領は米国の歴史の中でも素晴らしい時期に、類いまれな、充実した人生を送った。そして、その人生と功績について語るとき、即座に思い浮かぶのは故バーバラ夫人のことだ。

夫妻の物語については、過去にさまざまなことが伝えられている。象徴的なラブストーリーだ。第2次世界大戦中の戦場からホワイトハウス、そしてその後の人生まで、夫妻を見る誰もが、2人の間の愛情と心のつながりを感じ取ることができた。

元大統領が夫人の死から8カ月もたたないうちに亡くなったことがそれほど驚きのように感じられないのは、そのためかもしれない。

長年連れ添った夫婦の一方が死去して間もなく、残された一方が亡くなることは「タコツボ症候群(broken-heart syndrome)」「未亡人効果(widowhood effect)」などと呼ばれる。2人の心が深くつながり、相手が存在しないことに耐えられないのだというロマンティックな考え方だ。

手続きは「急務」

ブッシュ夫妻の最後はロマンティックだったが、夫婦のそれぞれが死去するタイミングは、遺産計画にプラグマティック(実務的)な問題を起こすものだ。遺産計画においては、死期が大きな影響を及ぼす。

長い結婚生活を送った高齢の夫婦が相次いで死去するのは珍しいことではないが、遺産管理はそれぞれが亡くなった日の間の期間と、事前に立てられていた遺産計画の詳細によって進め方が異なったものになる。

法律事務所パーキンス・クーイで遺産計画を専門とするパートナーの1人によれば、「残された配偶者が一定の期間内、例えば2~3週間以内に亡くなった場合、いずれも配偶者より先に死去したものとして扱うことが可能であり、相続手続きを行わずに、より合理的に遺産管理のプロセスを進めることができる」という。
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編集=木内涼子

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