また世耕氏は現在、日本でイノベーションを後押しする3つの「うねり」が起きていると言及した。
1点目は経産省を中心に推し進める、コネクテッド・インダストリーズ。「AI、ビッグデータ、IoTの社会実装が急速に進み、データを介して様々なものが繋がり、それによって新たな価値を生み出していく。こうした動きを大きなうねりにつなげるべく、私は昨年、コネクテッドインダストリーズのコンセプトを打ち出しました。データによる繋がりを新たなビジネスチャンスにつなげ、まったく新しいエコシステムを構築する。これにより日本経済をさらなる成長軌道に乗せて、その波をアジアや世界の経済につなげていくことを目指します」と述べた。
2点目は、レガシーを打ち破る規制改革。「イノベーションの創出には、既存の技術を前例とした規制をスピード感を持って改革し、技術と制度のギャップを埋める必要があります」と述べ、日本で今年から開始した「レギュラトリー・サンドボックス(革新的な新事業を生み出すため事業者に対し規制を即時適用せず、実証実験を行いやすくする取り組み)」を紹介した。
「レギュラトリー・サンドボックスは挑戦のフィールドを限定してはいません。あらゆる分野で、実証を可能としております。この世界最先端の『まずやってみる』を可能とするサンドボックスによって、日本で生まれる新たなビジネスチャンスをアジアや世界のイノベーションにつなげていきます」
3点目はイノベーションの源泉として、スタートアップの盛り上がりを強調した。「スタートアップがどれだけ活躍しやすいか。これまでの常識にとらわれない挑戦を行えるか。これがイノベーションの鍵を握ります。そのため私は今年、『世界に次の革新を』をキャッチコピーに、「J-Startup」プログラムを立ち上げました。素晴らしいポテンシャルを持つスタートアップ92社を、アジアや世界の成長企業と結びつくように、徹底的に政府として応援してまいります。今日お越しの皆様が、日本のネクストBUBカンパニーズと新たな繋がりを持って、さらなる飛躍に向けた成長のエンジンになることを大いに期待しています」と呼びかけた。
そのうえで、3つのうねりをアジア、世界へ繋げる大きな仕掛けの一つとして、年末に発効するTPP11、CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定)を挙げた。「これによってアジア外で環境が整備され、アジアにおけるイノベーションを活性化することになります。皆様もTPP11、CPTPPによって生まれるチャンスを最大限活用し、アジアそして世界全体の成長につなげていこうではありませんか」
最後に「日本はアジアの優良企業がグローバルにさらなる成長を遂げられるよう、全力で応援いたします」と強調し、アジア各地から集まった参加者から大きな拍手が上がった。
「チャレンジを楽しむ姿勢を忘れないで」メルコリゾーツのローレンス・ホー氏
パネルディスカッション第3部では、ゲーミング事業とエンターテインメントリゾート施設の開発、所有、運営を行うメルコリゾーツ&エンターテインメント・リミテッド会長兼CEOのローレンス・ホー氏と、グロービス経営大学院学長兼グロービス・キャピタル・パートナーズ代表パートナーの堀義人氏が「リーダーシップにまつわる教訓」をテーマに議論した。
ホー氏は、「起業家にはリスクテイクの精神が必要。会社を立ち上げて17年、多くの重要な判断をしてきたし、さまざまな分析とリサーチを重ねてきましたが、最後は自分の勘を拠り所にしてきました。こうしたリスクテイクの精神が一番大きな教訓」と述べた上で、「私は日本の『カイゼン』という考え方を好みます。組織的にカイゼンを繰り返すこと。そしてチャレンジを楽しむ、苦境の中にあっても楽しむ姿勢を忘れないことです」とアドバイスを送った。
堀氏もIQ(知能指数)や、EQ(心の知能指数)に並ぶ、AQ(逆境指数)に触れながら、「逆境をサバイブし、協力しながらマネジメントしていくことがリーダーシップには大切。日本は良い方向に向かっている。チャレンジを経て成長出来るよう、背中を押していきたい」と語った。