経済・社会

2018.12.07 10:00

世界が本気の海洋保護 日本は「海のダボス会議」開催国を目指せ


また、モントレーベイ水族館のプライベートセッションでは、エクゼクティブディレクターのジュリー・パッカード氏とジョン・ケリー元国務長官という顔合わせで、20名ほどの現地の各組織の代表者らに、ケリー元国務長官が詰め寄るような場面も見られ、参加者全員の真剣さが伝わってきた。

今年は各国から合計305のアクション、107億ドル相当のコミットメントが発表され、海洋保護区は1400万平方kmに増大させる約束がなされた。海洋環境に対する世界の関心と取り組みは、今まさにヒートアップしている。

水産庁から1名、国会議員0名

では日本は何をコミットしたのか。メインステージで高橋康夫環境省地球環境審議官が環境省マターの前向きな姿勢を発表したのをはじめ、JAMSTECが6億3000万円を海洋観測網の構築にコミットするなど、海事・安全保障関連14項目を含む25件ほどのコミットメントがなされた。

ところが、日本が世界から期待されているのは、何よりも日本の漁業問題の解決である。日本政府の漁業問題に向けた2018年のコミットメントは、主に発展途上国に対する4項目、3億円相当の支援の表明にとどまり、自国の水産資源や漁業改善に関する発言は皆無であった。

筆者がお目にかかった限りでは、水産庁から一人参加していたが、参加の目的を訪ねると、見学ということであった。国会議員の参加はおそらく皆無であった。これは非常に残念な機会損失に思える。



会議冒頭で流されたチャールズ皇太子殿下のビデオメッセージでも、世界が取り組むべきは、IUU漁業(違法・無報告・無規制漁業)の撲滅と海洋ゴミの削減である、と述べられていた。この2点が強調されたとおり、水産資源の持続可能な利用と漁業改善は海洋問題の中枢である。

今年は、安倍政権主導で、70年ぶりに水産行政の大改革がなされている最中である。水産庁は、早い者勝ちで資源を枯渇させてきた現行の漁業から、TAC(総漁獲可能量)を算出し、IQ(個別割当方式)を採用するという、科学的数値に基づいた資源管理型漁業に大転換する。これに伴い、水産予算概算要求では前年度比1.7倍の3002億円を要求している。

Our Oceanでも、このことを世界に伝え、日本の水産行政の本気度を評価してもらうことが重要だったのではないか。筆者は、海洋環境の国際舞台で、環境省のみの発表を聞き、日本の海洋政策には省庁連携が不可欠であると普段以上に強く感じた。

EUには海洋担当大臣が存在し、米国は海洋大気庁が海洋と空を包括的に統括している。この美しい海に囲まれた日本こそ、省庁間の横串連携、さらには海洋省があってしかるべきではないだろうか。

来年2019年、大阪で開催されるG20でも、海洋環境問題がテーマとして採択されている。日本はアジア海域の秩序と持続可能性を形成し、アジアのリーダーシップをとっていかなければならない。

Our Oceanは、2019年はノルウェー、翌年はパラオでの開催が決定している。2021年に日本が開催国となれば、官民の意識変革に多大な好影響を及ぼすことだろう。アジア諸国にリーダーシップを示すこともでき、そのレガシーを2025年の大阪万博につなぐこともできるだろう。Our Ocean 2021 Japan開催に向けて世論の盛り上がりを期待したい。

連載:海洋環境改善で目指す「持続可能な社会」
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文=井植美奈子

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