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2018.12.10

熱海で起きた化学反応 「着物イベント」が街の景色を変える

第1回『あたみ着物まち歩き』の様子。駅前商店街を散策した後、歴史的建造物の起雲閣を訪ねた


実は奇遇なことに、永田さんの妻である朱美さんは、和装を用いた着こなしを得意とするスタイリスト。永田さんを紹介したA-Bizもそのことは知らなかったという。

「いつか熱海に人を呼んで着物のイベントをやりたいと思っていたんです。そのタイミングが思ったより随分早く来ましたね(笑)」(朱美)


左から、永田雅之さん、朱美さん、鈴木信太郎さん。熱海のコワーキングスペース「naedoco」にて


イベントをやるなら、熱海梅園の梅の盛りであたみ桜も満開になる2月がいいということになり、急ピッチで準備が始まった。チラシを作り、SNSで発信し、地元の人々にも広くアナウンスした。朱美さんの活躍もあり、東京からも大勢の人が集まり、前述のようにイベントは成功に終わった。

「市外から人が来てくれたことでイベントがさらに盛り上がりました。地元の人からの評判も上々です。着物に興味はあるけどチャレンジしたことがないという人には、観光客の方も地元の方も問わず参加してほしいですね。リピーターを増やすためにもイベントを続け、発信をしていきたいと思っています」(鈴木)

チャレンジを受け入れる環境がイベントを成功に導いた

「あたみ着物まち歩き」の第2回は5月に開催され、熱海芸妓見番歌舞練場で土日に開演される「湯めまちをどり華の舞」の鑑賞がメインイベントとなった。

続く第3回は8月の開催で、浴衣姿で熱海港から出る観光船に乗り、クルーズを楽しむという趣向。船内では着物ファッションショーも繰り広げられた。回を追うごとに参加者は増え、東京の呉服屋がバスツアーを組んだりもしたという。


第3回『あたみ着物まち歩き』では、参加者は浴衣に身を包み、初島を往復する客船でクルーズを実施。撮影:たかはしよしこ

今後も「あたみ着物まち歩き」は続き、次回は来年2月に開催予定。熱海はまだインバウンドが弱いため、海外観光客にも訴求できるイベントにしていきたいという。

「一人のアイデアと力ではこんなイベントはできなかったと思います。永田さんと彼を紹介してくれたA-Bizには感謝しています。A-Bizのおかげで人と人がつながる環境が以前よりも充実したように思います」(鈴木)

「熱海では若い人たちが率先してまちづくりを頑張っている。その姿に影響されて、自分も熱海で何かをやってみたいという想いがあった。ここなら何かできるという空気が漂っていたんです。そんな時にこのイベントのお話をいただけてうれしかったですね。イベントが街に受け入れられたのには、まちおこしに対する地元の人の理解が進んでいたおかげという面が大きいと思います」(永田)

イベントを重ねるに連れ、割引サービスをしてくれたり、ウェルカムドリンクを提供してくれる協賛店も増えつつある。鈴木さんと永田さんに今後の目標をたずねると、「熱海を着物で歩くことが自然な景色になること」と口を揃える。


第3回『あたみ着物まち歩き』の参加者たち。撮影:たかはしよしこ

ちょうど今月、義祖母から箪笥に眠っていた男着物が一式届いた。来年2月には、無理を押してでも「あたみ着物まち歩き」に参加したいと思う。きっと新しい街の景色が見えるはずだ。

連載:熱海の内側に帯びる熱「移住ライターのルポタージュ
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文=高須賀 哲

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