電通総研内のクリエイティブシンクタンクによる連載「NEW CONCEPT採集」


ChameleonMaskは、仮面がディスプレイなので映る人物を変えることで、人格の切り替えが容易です。加えて、顔と身体を分離させるので、リアルではできなかった変身も可能です。一人の人間が複数拠点に自分の分身を複製したり、複数の人が自分の顔として交互に現れるといったものです。顔役、身体役が1対1の関係だけではなく、1対N、N対1もありえるということです。

次の課題は、身体です。身体までなりきるには、外見的な特徴と動作の模倣、感覚の共有を解決する必要があります。外見は、衣装や制服によって似せることができるでしょう。着ぐるみは、たとえ中身が人間でも、キャラクターの強烈な個性によって握手やハグを求められます。動作の模倣は、人の身体を筋刺激で遠隔操作する研究5や感覚を伝送する研究が行われています。

これらの研究が面白いのは、刺激の遅延が短いと他人の動作も自分の体性感覚として感じるところです。そして、人が本来持っている力や動き以上の能力を技術的に拡張することで、まさにスーパーマンになることも夢ではないかもしれません。

さて、人は何者であるかの自問自答から、複数の人格(顔)を元々備え、技術の進歩により人格の切り替えが容易になる可能性を紹介しました。人生100年時代。自分の名前や顔を売り、実績を残してもまだ60歳。昔からの夢を叶えていくのはいかがでしょうか。

ありのままの自分を愛すとは、いろんな可能性がある自分を認めることだと思います。こなせる人は、副業ならぬN業でもいいでしょう。いろんな人物になりきるのは、役者だけの特権ではないはずです。男性が女性に、大人が子供になるなど立場が変わることで、見えない偏見に気が付くこともあるでしょう。映画『マルコヴィッチの穴』のように役から抜けられなくなるというオチだってあるかもしれません。

新しい人格を通して友人が増え、仕事が始まるのも一興。そして、「自分の人格」をお休みする時は、ぜひ誰かに貸してあげてください。


三澤加奈◎電通Bチームゲスト。昼はクリエーティブ制作、夜はラボで開発と研究、サバイバル南米長期出張を経て博士号取得。現在、ヘルスケアの事業開発に従事する。丁寧な暮らしが憧れ。

文=三澤加奈 イラストレーション=尾黒ケンジ

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