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イノベーション・エコシステムの内側


なかでも注目したいのが、楽天だ。楽天USAは、ウーバーのライバルである「リフト」へ巨額の投資を行い、筆頭株主でもある。リフトに限らず楽天の挑戦は年々増していて、何年も前から現地企業の買収を推し進め、業績を伸ばしている。

昨年には、シリコンバレーに自社ビルを構え、オフィスを大幅にリノベーション。今年8月にはコワーキングスペースの「RakuNest」もオープンした。今回、私もここに学生を連れて行き、楽天ドイツでも経営に携わった日本人経営者のSandyさんに、おしゃれな空間を案内してもらった。ここには、すでに日本で話題のAIのスタートアップも入居している。

また、某日系大手化学材料メーカーは、バイオ系インキュベーションセンターとスポンサー契約を締結し、スポンサー枠でセンター内部にオフィスを設置して、スタートアップとの交流を活発に行っている。担当者の友人に話を聞くと、「日本の本社は、インキュベーターという仕組みも誰も知らなかったので、説得が大変でした」という。

その背景には、従来のように駐在事務所を構えて情報収集したり、データベース会社やベンチャーキャピタル経由でスタートアップリストを貰ったりするだけでは、新規事業はおろか共同研究すら生まれなかったため、本社で駐在事務所の在り方について改革論が出た経緯があるようだ。現地インキュベーションセンターの運営者の強力なネットワークと実績や人柄も経営陣には好感を与え、実現したという。今後の成果が楽しみである。

ミーティング30分ですべきこと

幼少期よりアメリカに住んでいて、デジタルヘルスに特化したスタートアップ投資で実績を上げる「Kicker Ventures」の清峰正志氏は、シリコンバレースタンダードをよく理解して働いている日本人は少ないと言う。海外の大物スポーツ選手でさえ、日本に移籍したときは、日本のやり方に順応しないと成功を収められないのに、日本人はシリコンバレーに来ても、日本のお作法に固執してしまうそうだ。

「まずはシリコンバレーのスタンダードな働き方をきちんと理解するべき。日本人だからこう働いた方がよいと言う正解はなく、人種など関係なく、個人としていかにして高いレベルで働くかにこだわることが重要だ」と清峰氏は指摘する。

「日本人にとっての挑戦は、シリコンバレーの変化の速さについていけるかどうか。とくに言葉の壁を乗り越えて、いかに技術やビジネスモデルの進歩についていくかが課題だと思う」と言うのは、日本で医師免許取得後、ハーバード大学で研究者として働いたこともある起業家だ。彼は日本で2度イグジットしたのち、シリコンバレーに移住。現地で著名なシリアルアントレプレナーと新たに共同創業し、資金調達も成功させ、現在はグローバルにサービスを伸ばしている。



ではシリコンバレーの大企業のスピード感とはどんなものなのだろうか? 

アメリカで育ち、東京大学を卒業後、複数の企業を経て、現在グーグル本社のファイナンス部門で働く友人に聞くと、「日本人の挑戦もアメリカ人の挑戦も同じ。逆に、日本人で固まってしまうと無駄なところに労力を使って終わるから、まずはそれを避けなければいけない」と言う。そして、次のように断言する。

「日本人だからこうしよう、というのは微塵も評価されない。アメリカで仕事したいなら、アメリカ人と同じように、アメリカのスタイルで仕事をする術を覚えないといけない。会議ひとつにしても、挨拶から入り、名刺交換をして、ミーティングが終わった後はサンキューメールでフォローアップして、こんなことをやっていては遅い。ミーティングが30分あったら、その間で印象付けてアクションを決めないと、もう次はない」

文=森若幸次郎

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