郷に入っては郷に従え 改めて考える「シリコンバレー流」の仕事術

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11月の半ば、シリコンバレー在住の友人たちから届くメールには、必ずといっていいほど、「絶対にマスクを持って来たほうがいい」というアドバイスが添えてあった。彼らへのお土産も含め、私は大量のマスクとキットカット(海外でもウケがいい)を購入し、羽田空港へ向かった。

久しぶりのシリコンバレーは、「キャンプファイア」と名づけられた山火事が北カルフォルニアで猛威をふるい、行方不明者631人、死者63名(11月16日)を数える大惨事で揺れていた。

私は、普段はサンフランシスコ空港を利用しているのだが、大気汚染を逃れるべく、急遽、サンノゼ空港に着く便へと変更した。しかし、到着すると、PM2.5(微小粒子状物質)ばりの汚染された空気が充満していた。

今回の旅の目的は、今年で4年目となる日本からの大学院生のシリコンバレーツアーのアテンド。3日間の滞在中、友人の職場も含めて合計16社を訪問した。

日本が誇るグローバル企業、外資系弁護士事務所、世界中で巨額の投資をするベンチャーキャピタル、インキュベーションセンターなど、多彩な現場で活躍する日本人と濃厚なミーティングを重ねることができた。個人的には、シリアルアントレプレナーである先輩方のオフィスも訪れ、夜は現地の友人と会食した。



今回、その人たちとの会話のなかで、私なりに見えてきたことがあった。それはシリコンバレーにおける「仕事術」についてだ。

シリコンバレーでは、「早く失敗して、何度もピボットすること」「チームワークを大事にすること」「リスクを取ること」が成功のカギだと言われている。しかし、彼らは実際に、毎日どのように働いているのだろうか。現地で奮闘する彼らとの話のなかに、日本人や日本企業が、「すべきこと」「やめるべきこと」のヒントがあった。

日本人の「ありがち」パターン

日系大企業のシリコンバレーにおけるチャレンジに共通するのは、まず、イノベーションを起こすための新規事業開発と、協業できるスタートアップを見つけることだ。しかし、シリコンバレーに送り込まれた大多数の日本のエリートは「どうしてよいのかわからない」というのが実情だ。

彼らはシリコンバレーに慣れるために、手当たり次第にスタートアップのミートアップに参加するのだが、日本企業の人間ばかりが集まる会に足を向けてしまう。また、日本人の多いインキュベーターに関わるため、一流のスタートアップとの交流がない。これがよくあるパターンだという。

半年ほどすると、シリコンバレーのスピード感に慣れ、それに比べて遅い日本の本社に決断スピードと実行力を上げるよう提案するが、決定権は本社が持っているパターンが多く、説得するためのスカイプミーティングや出張が増える。そのまま時はあっという間にすぎ、知り合いが増えて来たところで、5年間の駐在員生活が終わるということも多いようだ。

しかし、その状況を打開すべく、積極的に現地の人間たちとコミュニケーションをとり、素晴らしい成果をあげる日系の企業も徐々に増えてきたようだ。そういう企業は、実際に自分たちで新規事業を開発するよりも、むしろ、優秀なスタートアップへの投資や買収を始めている。
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文=森若幸次郎

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