「DIOR」来日ショーで感じた日本の誇り

一夜限りの「ディオール」のショー



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ショーが始まると、ほんの数秒で円形の会場にはメンズモデル達が続々と現れる。

「来年はこのロゴを着た人を数多くみること間違いなし」と思わされる、ポップな「DIOR」ロゴをあしらったトップス、ウィメンズではお馴染みの「サドル」バッグがメンズのショーでも登場。洋服の素材も防護服に用いられるメタリック素材「タイベック」やホログラム加工などを使うことでフューチャリスティックなムードを連出した。

また伝統のオブリーク柄も、空山基のロボットを使った新しい柄として採用された他、「ディオール」の象徴である花「ローズ」は「桜」を想起させる柔らかい桃色に仕上げていた。
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ランウェイを歩くモデル(服)を追っていると、それまで照明が暗くてよく見えなかった客席(フロントロー)ゲストも一気に目に入ってくる。



海外からはデビッド・ベッカムやケイト・モス、エイサップ・ロッキー、ベラ・ハディッド、エズラ・ミラーなどなど、誰もが知るような世界的なセレブ達が並ぶ。



日本からは、チームラボ 猪子寿之代表などの実業家をはじめ、村上隆、藤原ヒロシ、窪塚洋介、登坂広臣、ケンブリッジ飛鳥といった、誰の名を先に出せばいいかわからないほどの著名どころが顔を揃えていた。



ファーストルックと呼ばれる最初のモデルが出てきてから、わずか7分でショーのフィナーレ。冒頭で書いたように、皆一様にたった数十分の出来事の為に来ている。「ディオールが日本でファッションショーを行う」ということはこういうことだ。

これぞ日本の「おもてなし」

だが、これで終わらない。パーティーの始まりだ。



この日はショーの終わりの合図でもあるデザイナー挨拶が終わっても、レーザーも音楽も鳴り止む気配がない。むしろ、ショーの終了後に今日一番のレーザーが飛び交っていた。

その最中、突如大勢の日本人スタッフが会場中央に行き、速やかに“何か”をし始める。暗闇から微かなライトを頼りに眺めていると、テーブルやDJブースを一気に運び、3分前までモデルが歩いていた、ランウェイステージが一瞬でパーティー会場へと変貌した。



DJは、エレクトリック・ダンス・ミュージック好きなら「これだけでも価値がある」と唸るような、音楽プロデューサーのディプロが登場。スピーカーは、良質なクラブでお馴染みのVOIDを使用、低音で地面から体に伝うように揺れるほどの音量で盛り上げた。


最後まで円形会場の特性をいかして観客を虜にした360度のレーザー

インビテーションに始まり、会場演出、最新コレクション、お目にかかれないセレブ、どれも素晴らしい要素であったが、驚嘆という意味では、ショーのイメージを引き継いだままパーティーへの「転換演出」に心が打たれた。海外セレブがいる絶対に失敗できない状況で「おもてなし」を成功させた、本国チームと日本チームの連動した姿は見事だった。

言葉・写真・動画では伝わりきらない感動だが、「ディオール」という世界屈指のグローバルブランドのショーでありながら、日本を代表するモチーフである「桜」や日本人アーティストとのコラボ、それらを支える日本人スタッフの活躍……同じ日本人として、一人の観客として、誇らしさと同時に心が踊った。

連載 : クリエーションの一歩先を読み解く
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写真・文=砂押貴久

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