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2018.12.03 18:30

消費する楽しさは、生産する喜びに敵わない。オリジナルを追い求める小見山峻の矜持 #NEXT_U30

写真家 小見山峻


──幼い頃は、どんな子どもでしたか?
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活発な子どもだったと思います。小学生の頃は、SFファンタジーにハマっていました。スターウォーズやガンダムとか。設定がしっかりしているんですよ。

ガンダムはモビルスーツのメーカー同士の小競り合いとか、構想時点でボツになって実現されなかった機体、とかも綿密に作り込まれています。スターウォーズはそれぞれの惑星の環境に適応した衣服や生活様式まで考え抜かれている。そういうところに想像力を及ばせるのが好きでした。裏設定やダブルミーニングが好きな嗜好もそこで育まれたのかもしれません。

──中学、高校では?
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陸上競技をストイックにやっていましたね。音楽を聴いたり、芸術に触れたりもしていましたが、生活の中心にはスポーツがありました。ただ、中学一年生のときに日本画の名匠である円山応挙の屏風絵を見て、それは本当に信じられないくらいの衝撃を受けました。見た瞬間から、しばらく動けなかった。

──中学一年生にして、すさまじい感受性ですね。

巨大な屏風のサイズに対して、描かれている面積が狭くて。リズム感や空白の美しさが凄まじいんですよ。15分くらい見つめていました。それから水墨画や日本画に興味を持って、伊藤若冲、長谷川等伯など、片っ端から見るようになりましたね。構図や色合いなど、受けた影響は計り知れないです。

写真集には日本刀をさまざまな技法で撮った写真が収録されていますが、水墨画との共通項があると思っています。

媒体や案件に応じて姿勢を変えることはない

──現在の小見山さんを象徴するキーワードに「音楽」がありますが、学生時代はどのような音楽を聴いていましたか?

高校時代は、月曜から土曜まで部活をしていて、日曜日は家でMTVやスペースシャワーを観ていました。それが音楽に深く入り込んでいった時期だと思います。様々なジャンルを聴いていましたが、その頃から大好きなデンマークのロックバンド「MEW」は、音の空白の作り方だったり、円山応挙の水墨画に通じるものがあります。

──好きなものに一貫性があるのかもしれません。

写真を撮るようになって、自分の表現について突き詰めて考えるとき、過去の経験や受け取ってきたものからの影響は無視できないな、と。振り返るとある種の一貫性はあったようにも思います。

──写真をはじめるにいたるきっかけは?

大学卒業前後からずっと就職をするのに抵抗があって、何か自分にしかできないことを探そうと模索していました。歩きながら考え事をするのが好きなので、散歩ばかりしていたのですが、そこで、カメラがあったら楽しいかなって思い立ったんですよ。それで写真を撮るようになって、気づいたら今、ぐらいの感覚です。

──なぜ、写真だったのでしょうか。

一人で完結するから、かもしれません。性格に合っていると思います。作ることに関してはわりとエゴイスティックなので。また、自分という存在を確立するために、何らかの手段を持つべきだと考えていました。そんななかで手に取ったのが、写真だったということだと思います。

影響を受けた写真、という点では雑誌「HUGE」に掲載されていた、マルセロゴメスというブラジル出身のフォトグラファーの撮り下ろしが挙げられます。アートとしての写真を知って、やってみたいと思いました。

──音楽を撮っている、という印象も強いと思います。

それは周りの評価ですね。日本では、ミュージシャンの写真を撮っている人は、いとも簡単にそういうカテゴライズをされます。雑誌も雑誌の人が撮る、というふうに偏るし、タレントを撮る人はタレントを撮ることが多い。僕はたまたまバンドを撮る機会が多くて、それ自体はありがたいことだし、自分が好きなアーティストは撮り続けたいですが、本来的には写真そのものに注目すべき。撮影対象のジャンルによってカテゴライズされるべきではないと思います。

──長く撮影を手がけてきたロックバンド「Suchmos」と共に大きくなってきた、という側面もあるのではないでしょうか。

それは、まさしくそうです。彼らの音楽が好きだし、偶然出会って撮り続けていく中で、それぞれの歩みが重なったと思います。常に刺激を貰ってきました。部活のチームメイト、みたいな。それがきっかけで色んな人に写真を観ていただくきっかけができたのは、ありがたいことだと思っています。

──写真家として評価され、仕事が増えてゆくなかで、それぞれに対してどんな心境で臨んできましたか?

どんな撮影をするときも変わりません。媒体や案件に応じて姿勢を変えることはないです。自分の中には撮りたい写真のアイデアが山ほどあって、場所だったり、物だったり、発想、形状だったり、漠然としたものから具体的なものまであります。それをどのように写真にしていくか、ということを常に考えています。なので、クライアントワークは条件面での規定はあるにせよ、考え方は変わらないですね。あくまで自分の写真なので。

──「あくまで自分の写真」というのは?

ファッション、ポートレイト、風景写真、そういうジャンルを意識しなくても良いと思っています。自分のイメージが明確にあれば、外部からのカテゴライズは意識する必要ありません。僕は写真そのもののアイデアや、撮りたい画を考えるだけですね。
次ページ > 写真集を出すに至った経緯

文=長嶋太陽

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