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撮影対象や媒体ではなく、写真という表現がどこまで認められるか

──自分自身で写真集を出すに至った経緯と考えを教えてください。

まず、写真集を出さないと、芸術としての文脈で受け取ってもらえないという現実があります。精一杯の表現をしても、クライアントワークは自分自身に帰属しにくいので、自分の名前で形にしなければならないとずっと感じていました。20代が終わるこのタイミングで、出すなら今だな、と。



──今回の写真集には、主に「鉄」をモチーフにした作品が収められています。その理由は?

僕の先祖は、刀匠を営んでいました。もうすぐ30歳を迎えるにあたり、自身のルーツに対して向き合うなかで、鉄の重機に惹かれ続けてきたこと、自分自身の中を駆け巡る血液、それらの符号を感じました。徹底的に純度100%で自分を出し切れるようにやらなくちゃいけないと考えていたので、制作費も全て自分で出して、自分で考えて、一部のデザインを除いてほとんど一人で形にしました。貯金はゼロになりましたね。

──強い決意を感じますね。

当たり前の覚悟だとは思います。中途半端な覚悟で作ったものが長く残りはしないだろうと。

──写真集というフィジカルなものにこだわった理由についても教えてください。

たとえばSNSで見てもらっても、写真そのものに対する評価はされにくい。撮影対象や媒体によって左右されるのではなく、純粋な写真という表現がどう評価されるのか、というところを試したくて、写真集という形にこだわりました。今回、JWアンダーソンに選出してもらえて、「やっぱかっこいいんじゃん」と思えて、後押しされた部分もありますね。

──芸術の文脈で評価されることも必要なのかもしれませんね。

そうですね。昨年、ロンドンのテートモダン美術館に行ったのですが、そこに森山大道の写真が飾られていてとにかく悔しかった。「優秀なクリエイター」になるつもりは毛頭ありません。自分自身の表現を突き詰めてゆけば、それが芸術として認められると信じていますが、そのためにはまず手にとって見てもらわなければならないな、と。

──5年、10年先は国外へ?

海外で評価されることは絶対に必要ですが、拠点を海外にしたいとは思っていません。これまでキューバやロンドンへ行って撮影をするなかで、逆説的に、日本に生まれたからには、日本に向き合っていたいと考えるようになりました。ルーツにあらためて向き合って、その上で世界で評価される写真家になりたいですね。



こみやま・しゅん
◎写真家。1988 年生まれ、神奈川県出身。2018年11月に、初の写真集「hemoglobin」を自費出版で制作(¥4500+税、500部限定)。11月28日から12月4日まで、中目黒・COMPLEX BOOSTにて展示会を開催している。

文=長嶋太陽

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