ビジネス

2018.12.03

「100億総不幸社会」に生きたいか 聴衆を魅了した「1位起業家」のスピーチ全文

アストロスケールCEO 岡田光信

圧倒的な当事者意識、危機感、静かな覚悟、強烈なメッセージ。6分余りのスピーチに、約450人の参加者は聴き入った──。

11月26日に開催した「Forbes JAPAN CEO Conference 2018」で発表した「日本の起業家ランキング2019」。初の1位に輝いたアストロスケールCEOの岡田光信が壇上で話し始めた。

起業家ランキングは今年で5回目。岡田は国内外の政府や国際機関に提言を行い、宇宙ゴミの除去に向けた動きを後押しするなど、社会課題の解決に注力する姿勢が評価された。

この日のテーマは「VISIONARY」。2050年、日本は、世界はどのように変わるのだろうか。大企業のCEOと起業家、専門家らが入り混じり、未来を論じた。

カンファレンスの締めくくりに、1位の表彰を受けた岡田のスピーチが始まると、全会場から熱い視線が注がれた。この日一番の大きな拍手を浴びた、岡田のスピーチ全文を紹介したい。


こんばんは。アストロスケールの岡田でございます。この度はこのような、本当に素晴らしい賞をいただきまして、チーム、チームの家族、それから協業先、色々話をさせていただいている世界各国の政府、全ての皆様にお礼を申し上げたいと思います。

今日いただいたお題は「2050年のビジョン」ということで、マクロで目線の高いバージョンと、ミクロで地べたを這うようなバージョンと両方考えてきたのですが、今この場で、マクロのバージョンでいこうと決めました。

2050年、「100億総不幸社会」に生きたいか

2050年の世界の姿は2パターンしかありません。一つは「持続可能な社会」。二つ目は「持続不可能な社会」です。

2050年にどういう世界になっているか、というデータはいっぱいあります。人口は98億人になっていて、環境問題がどんどん激しくなっています。食料、水、エネルギーの消費量は50%以上増加します。そのとき漁獲資源は80%以上なくなり、森林は今の50%以上喪失します。もうこれはわかっているんです。世界の半分、50億人が大気汚染に悩まされる。 そんな社会です。100億総不幸社会になります。

皆さんはそんな総不幸社会に生きたいでしょうか。私が32年後、77歳の時には、やはり孫と楽しく戯れたいなと思うんですね。皆さんも毎日暗いニュースがどんどん出るような社会に生きたくないじゃないですか。なので私たちは今、意識と行動を変えなきゃいけないんです。変えなきゃいけない。持続可能な社会のために。

ところが、意識を変えるって非常に難しいんですね。じゃあどうしたらいいか。 今ここにいらっしゃる皆様、あるいはForbes JAPANを読まれる方々は日本のトップノッチのインフルエンサーです。間違いないです。

こういった皆様が、私たちが責任を持って技術革新にコミットするしかないと僕は思っています。技術しか解決できない。もっともっと技術にコミットする。革新をどんどん受け入れる。どんどん速くなって構わない。それを受け入れる。 失敗もある。でもそれを生かしていく。そういう社会にしていかないと、僕たちは、98億人が持続可能な社会はつくれないのです。
次ページ > 「市場がない」のはバッドニュース?

文=林 亜季 写真=小田駿一

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事