なまはげは、大みそかの晩に藁(わら)を羽織った鬼が、包丁とおけを手に各家庭を訪ね回る伝統行事。厄災をはらい、吉事をもたらすとされている。
男鹿市では、なまはげを活用した観光客誘致に乗り出す。市観光協会と門前地区など数ヶ所の集落が協力し、なまはげ行事の見学ツアーを、日帰り(1万8000円)と1泊(2万3000円)の2種類で企画。観光客を一般家庭に招き、なまはげの来訪を味わってもらうという。
市は「これまでは各集落が伝統として行うだけで、旅行商品化はできていなかった。大みそかだけでなく、年間を通して男鹿に訪れてもらえるようにしたい」と意気込む。
外国人観光客に対する受け入れ態勢も整える。秋田県は昨年、外国人宿泊者数が初めて10万人を突破。だが男鹿市には、英語と中国語、韓国語の観光パンフレットはあるものの通訳がいない状態で、今後は、外国人留学生によるボランティアなどを活用しながら確保を目指す。市商工会も、「サービス業のためのおもてなしマニュアルなどが必要」とし、商店街での外国人向け土産販売や、外国語表記の周遊マップ作成などを進める。
交通アクセスの改善も必要だ。市内の主要交通手段は自動車だが、市商工会によると、現在は市内にレンタカー店はないという。さらに、なまはげの行事が行われる12月は雪の季節で、都市部から訪れる人にとっては、レンタカー利用はハードルが高い。JR男鹿駅から温泉郷、伝承館などを回る相乗りタクシーも用意しているが、利用には前日までの予約が必要。今後は、予約なしで使えるシャトルバスの運行を目指すほか、来年春からは、同駅と水族館を結ぶ定期観光船の運行も始める予定だ。
市商工会の久保市隆事務局長は、「なまはげの行事が途絶えていた地区でも復活の機運が高まっている。地域の再興と観光客の増加を、街の経済繁栄につなげたい」と話している。