せめて「ナムい」と弔われる社会に!

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模様替えしたばかりの平日深夜のニュース番組をつけながら、PCで作業をしていたところ、唐突なアナウンサーの問いかけに、テレビへと顔を向けた。

「まずはこちらの言葉をご存じですか?」

スタジオのモニターには「ナムい」という文字が、大きく映し出されていた。

ポカンとした。ここ最近で、耳目にした新しい言葉、例えば「脱プラ」であれば「脱プラスチック」のことだろうとすぐに予想はついたのだが、この「ナムい」には想像の取りつく島など微塵も無かった。

答えは、「南無阿弥陀仏」の「南無」に「い」をつけて形容詞としたものなのだそうだ。発案者は、浄土系アイドルの「てら*ぱるむす」。2016年の「今年の新語」第2位の「エモい」に変わるワードとして、例えば他人を敬うときとか、感謝するときに使う「ナムい」を世に提案し、なんと浄土宗の総本山である、京都の知恩院がオフィシャルに使用して一気に広まったという。


京都 知恩院(Leonid Andronov / shutterstock)

仏師の夢だったドローン仏の登場

その法然が開祖の由緒正しき古刹の、秋のライトアップイベントの告知ページがとにかく斬新だ。PR動画の第1弾は、木魚EDM編で、世界的に流行しているエレクトリック・ダンスミュージックに合わせ、1列に並んだお坊さんの背後からモクモクとスモーク(いやお線香か)が煙り、最後は一斉に合掌というもの。

そして、このサイトには大きく「#ナムい」の文字が。地元「知恩院さん」の除夜の鐘を聞いて育った身としては、ご乱心としか思えない。しかし、担当の僧侶によると、「インスタグラム、ツイッター、フェイスブックでしか訴えかけられない世代に向けてのアピール」だという。実際、SNS上には「最近、知恩院、攻めてるな。『ナムい』って何だよ」との投稿も見られ、しっかり話題の新語となったのだから、その狙いは成功したと言えるだろう。

実際のイベントでも、最も「ナムい」とされたのが「ドローン仏」だったという。これは文字通り、ドローンに仏像を搭載した操作自由の飛行物体だったらしい。制作した仏師によると、阿弥陀如来が極楽浄土に天からお迎えに来るのが来迎なので、仏像を宙に浮かすのは夢だったと言う。なるほど、なるほど、そう来たか。

ただ、「ナムい」が出て来た背景を考えると、ドローン仏の登場も、とても自然な成り行きに思えて来た。その理由を3つの観点から説いてみたい。
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文=田中宏和

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