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2018.12.01 11:00

佐賀からアフリカへ 厚さ1ミリの太陽光シートで世界を照らせ


これまでに蓄積してきた技術とノウハウを生かしながら、新たな可能性を切り開けるものはないか。あれやこれやと熟慮の末、たどり着いたのが「屋根×環境」であった。そして、のちに会社の運命を変えるフィルム型太陽光パネルと出合うことになる。

このパネルに可能性を感じた川口は、どうやってこの技術を屋根に生かすか、その思索に没頭する。そしてサウナの中でひらめいたアイデアを基に、このパネルを屋根に設置するフレームの特許を取得。Luz-solarと名付け、実用化にこぎつけたのだ。

しかし、この技術は革新的すぎて大量生産が難しく、日本国内では他社製品と価格競争ができるところまでたどり着かなかった。そこで目先を変えて狙ったのが、東南アジアだった。

だが、時すでに遅し。東南アジアには、すでに中国の網が張り巡らされ、付け入る隙がなかったのだ。日本国内、東南アジアと続けざまに挫折を味わった川口が次に目をつけたのが、アフリカだった。

「初めてアフリカの赤い大地に降り立ったときから、雄大な景色と活気溢れる人々に魅了されてしまったんです。それにアフリカの形って、九州に似てるんですよ。南アフリカは鹿児島、ケニアは延岡。モロッコは平戸あたりかな。そう言うと地理感覚がわかりやすいし、九州人として親近感も湧きますよね。ちなみにうちの会社がある鳥栖はサハラ砂漠です」

現地政府や民間企業、日本政府と協力し、川口のLuz-solarは現在、南アフリカやケニア、ベナンなどアフリカ各地に広がりを見せている。

川口が次に送り出すのは、太陽電池と屋根が一体化した商材だ。すでに特許も申請し、大手メーカーと提携して2020年の実用化を目指している。また、国連が推進するSDGsへの取り組みとして、太陽光パネルで発電した電気を売電し、その利益でアフリカなどの非電化地域へソーラーパネルを設置する運動にも参画していくという。

佐賀からアフリカへ。奇しくも今年は明治維新150年。海の向こうを目指した肥前佐賀藩の志士たちのDNAは、確実に受け継がれているようだ。

文=鍵和田昇

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