米製造業へのトランプの誤解が生む「GMと国に良くないこと」

(Photo by Jeff Swensen/Getty Images)

ドナルド・トランプは、自動車産業をはじめとする米国の製造業に雇用を取り戻すことを選挙公約に掲げた。また、世界の貿易体制を攻撃し、新たな貿易障壁を築くと主張。それらに合わせた行動を取ってきた。

だが、米ゼネラル・モーターズ(GM)が先ごろ発表した人員削減と工場閉鎖の計画ほど、こうしたトランプのやり方に対する明確な“反論”は他にはないと言えるだろう。

トランプが打ち出した一連の政策の背景には、次のような大きな「誤解」があった。

1. 米国の製造業の雇用が失われた主な原因は貿易

トランプは、米国の製造業の雇用が外国に奪われてきたのは北米自由貿易協定(NAFTA)などの「ひどい貿易協定のせいだ」と主張してきた。そして、この見解の問題点は、データと全く一致しないということにある。

米国の労働者に占める製造業の従事者の割合は、1960年代半ばから徐々に減少してきた。NAFTAが結ばれたのも、ウルグアイ・ラウンドの交渉の結果として世界貿易機関(WTO)が創設されたのも、1990年代半ばのことだ。

また、中国がWTOに加盟したのは2001年後半だ。そのころには製造業に従事する米国人の割合は、すでに1960年代半ばの28%から12%に縮小していた。一方で、仕事を奪ったのがテクノロジーであると考えられる証拠は、幾つもある。

ここ数十年、製造業の生産量は大幅に増加してきた。より少ない労働者でより多くを生産してきたことが意味するのは、生産性が向上してきたということだ。つまり、仕事の量が変わっただけでなく、仕事に必要なスキルも変化していたということだ。これが、トランプの第一の誤解だ。

2. グローバルなサプライチェーンが米国の雇用を奪う

多国籍企業は生産における異なる工程を、それぞれ最小のコストで最善の仕事ができる市場で行ってきた。トランプ政権が一貫して敵視してきたグローバルなサプライチェーンを、各社は構築してきたのだ。鉄鋼やアルミニウムなどの主要な輸入品の関税を引き上げることは、そうした企業にとってはコストの増大を意味する。

そして、ここにもトランプの誤解がある。グローバルなサプライチェーンを築くことは、米国の製造業者に国際競争力の維持を可能にする。この一連のプロセスが打撃を受ければ、コスト圧力が上昇。企業はコストを削減するための、別の方法を探す必要に迫られる。
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編集=木内涼子

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