「日本では考えられない、突然の大出世」 美術館ディレクターのグローバル思考

キース・ヘリング美術館プログラム&マーケティングディレクター(筆者撮影)


アートの普及活動だけでなく、LGBTQ人権の啓発運動やHIV/AIDS予防啓発や陽性者のサポートなど社会活動も積極的に参加している。

「キース・ヘリングが生前に人権やHIV/AIDSの運動をしていたので、それは『美術館としてやらなければいけない仕事』の一つでした。それまでずっと、自分がゲイであることをいかして社会に貢献できないか考えながらも動けずにいましたが、仕事を通じて思い描いていたアイデアや伝えたかったメッセージを届けることができました」


日本最大のLGBTQの祭典「東京レインボープライド 2018」では、キース・ヘリングのアートを使用したロゴで協力。実際にトラックの荷台に乗ってパレードに参加した。写真提供:東京レインボープライド

自分のことを語るとき、彼はたびたび「ある日突然」という言葉を使う。それは流されやすい人間の言葉にも見えるが、彼にはそういった人間特有の雰囲気がない。

「こう見えて自分をプロモーションすることが苦手なんです。だから人によっては『流されやすい人間』と思われるかもしれないですね。僕は生きる上で、『真実・素直・正直』を大切にしています。セクシュアリティーやファッションでも無理をせず、隠さないで生きている方がラッキーなことに巡り合うようになっているのかなと思います」

だから、彼に「今後」を聞いても意味がない。

日本人が海外で生活するというと「自ら積極的にチャレンジしていく」というイメージを持ちがちだが、一見流されているようでも、自然と物事が繋がっていく。「なるようになる」という人生観もある。だから、きっとまた何か自然な巡り合わせが彼を導くだろう。

連載 : クリエーションの一歩先を読み解く
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文=砂押貴久

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