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2018.11.30

求職者に対する粗末な扱い、得をするのはライバル会社

fizkes / shutterstock.com

ソーシャルメディアが普及し始めた当初、人々は自分の体験を友人と共有するため、フェイスブック、ツイッター、さまざまな掲示板やチャットルームを利用していたが、現在では従業員体験のシェアに特化したサイトが多く存在している。その代表例がグラスドアだが、実際の職場で働く様子を垣間見るチャンスを提供するウェブサイトは他にもたくさんある。

しかし、就職希望者や従業員に嫌な思いをさせることは、評判の低下につながるだけではなく、ライバル会社があなたの会社に勝つように闘志を燃やす人々の軍団を生み出すことにもつながってしまう。ユニバーシティ・カレッジ・ダブリンの研究チームによる論文では、会社が採用候補者に嫌な思いをさせることで生じるリスクが浮き彫りとなった。

研究チームは、「元選手の不変法則(Immutable Law of the Ex)」と呼ばれる現象について考察された。これは、人が元雇用主と闘う際に最高のパフォーマンスを発揮する現象のことで、スポーツの世界でよくみられ、スポーツ選手は以前所属していたチームとの試合に勝つべく全身全霊を注ぐ、というものだ。

研究チームは、サッカーのイングランド・プレミアリーグで2000年から2005年に行われた数百回の試合を分析し、それぞれの試合での選手のパフォーマンスを評価した。すると、選手のモチベーションには当然とも言える微妙な差が確認できた。

選手らには元所属チームにないがしろにされた怒りが確かに見られ、新しいチームへの忠誠心を示したいという気持ちと相まって、素晴らしいパフォーマンスにつながっていた。相手から拒絶されたことに対する怒りが、自分の力を証明したいという気持ちにつながり、全力でそれを証明しにかかったのだ。さらに、元チームメートの強みや弱みを把握していることも有利に働く。

研究チームいわく、この法則は職場にも当てはめられ、特に自分の感情をネット上で共有する機会が多い現代では大きな意味を持つものだ。悪い体験をしたことによる怒りは(特に自分に「背いた」組織と闘う場合に)新たなレベルのパフォーマンスにつながるだけでなく、否定的なレビューという形でその怒りをぶちまける場所はいくらでもある。
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編集=遠藤宗生

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