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ニュースワイヤーの一本


誰に対しても必要な質問をするホワイトハウス記者団の結束と、それを「支援」する大統領。ただし、米国ならではの、こうした連携に参加できるのは、一部のエリート記者だけだという事実も記しておくべきだろう。

ホワイトハウスに出入りする記者は、筆者のような外国人特派員も含めると相当数が存在するものの、そのほとんどは記者会見で質問する機会すら与えられないのが厳しい現実だ。

2016年大統領選の民主党の指名争いでヒラリー・クリントン元国務長官に敗れたサンダース上院議員は、アコスタ氏のような大手メディアの記者を「メディア・エスタブリッシュメント(支配階級)」と呼んで、批判の対象とした。

そして、彼らの立場を一変させたのが、トランプ政権の発足だった。スパイサー大統領報道官(当時)は、これまで記者会見を事実上独占してきた大手メディアの記者たちを一切無視し、あまり知られていない新聞や雑誌の記者を指すようになった。また、ネットを通じて、ホワイトハウスには縁のない地方紙の記者から質問を受けることもあった。

筆者も当初、トランプ政権の前代未聞のやり方に、ある種の小気味よさを感じたことは否定しない。なぜなら、花形記者とその他大勢の記者たちの「格差」が、今後は縮まるかもしれないという錯覚を覚えたからだ。

都合の悪い質問封じ込め

しかし、しばらくして、新たに「参入」してきた記者たちが、大手メディアの記者がこれまで繰り広げてきたような政権や大統領の説明責任を追及するやり取りに消極的なことが分かってきた。権力から嫌われれば、再び質問ができなくなるからだ。

トランプ氏が執拗にCNNなどを「国民の敵」として仕立て上げるのは、自らに批判的なメディアをたたくだけではなく、大手メディアとそれ以外のメディアの間にくさびを打ち込む狙いもあった。

アコスタ氏の騒動をめぐり、AP通信やワシントン・ポスト紙など大手メディア10社が抗議の声明を出した。そのなかに、「親トランプ」と見なされているFOXニュースが含まれていることで話題になった。

しかし、今年8月、トランプ氏がメディアを「国民の敵」と呼んだことに対して、400以上の新聞や雑誌が一斉に抗議の社説などを掲げたときと比べると、その動きに力強さは感じられない。

ワシントンの連邦地裁は、アコスタ氏のプレスカードの没収処分の一時停止を認めた。ホワイトハウスはカードを返還する代わりに、「記者会見での質問は原則、各記者1問ずつ」などの新規則を導入、トランプ氏に都合の悪い追加質問を事実上封じる措置を取っている。

事態は悪化の一途をたどっており、米メディアは、いまこそ結束力が問われているときなのだ。

連載 : ニュースワイヤーの一本
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文=水本 達也

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