復帰と同時に出世した 日本人パパの「スウェーデン育休」体験レポ

次女とは育児休暇を通じて圧倒的に絆が深まった。服や靴のサイズは全て把握しているし、寝かし付けもお手の物。


スウェーデンには24時間営業の店などほとんど存在しない。せいぜいあるのはガソリンスタンドに併設されているコンビニのような店くらいだ。会社でどんなトラブルが発生しようとも、子供を迎えに行く、配偶者の誕生日、という理由で平然と帰宅する。

つまり、家族と過ごす時間、5週間の休暇、これらの自由と引き換えに、現実的な社会の速度をゆったりさせるということであり、これが国民により選択された結果なのである。

私の家の前では、かれこれ1年以上道路工事が続いている。いつになったら終わるのか。しかし文句を言うつもりはない。道路工事に従事している人たちにも家族がいて、5週間の休暇を取得する権利があるのだ。


レストランでは、長女の話し相手、次女の対応、3人分のメニューを注文するというマルチタスクもできるようになった

日本では、働き方改革が話題となっているが、「今までの業務量を維持して早く帰るなんて絶対無理だ!」などという声が現場から上がっているようでは、まだまだ先は長い。

どうしたら早く帰れるかなどというような、付け焼刃的議論ではなく、今までの業務量を維持する必要が本当にあるのか、目指すべき社会の速度はどれくらいにするのかという問題の核心を突く議論が必要だ。それ以前に、そもそも幸せとは何かを一度考える必要があるのかもしれない。

残業をせず、5週間の休暇を取るのは、けっしてスウェーデン人が怠けているわけではない。優先すべきことと、それを実現できる社会の速度を、国政選挙の投票率87%という本物の民主主義的思想で決めただけのことなのだ。

そもそも国民の幸せとは何か。それを実現するためには、どんな社会が理想なのか。そろそろ日本でも、そのことを真剣に議論する必要があるのではないだろうか。

連載:スウェーデン移住エンジニアのライフ&ワーク
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文=吉澤智哉

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