いまだ強固な米ビジネス界の「ガラスの天井」を打ち破るには

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残念ながら、アメリカのビジネス界にはいまだに「ガラスの天井」が頑として存在する。とはいえ、新たに登場した興味深いウェブツールによると、事態は改善しつつあるようだ。アメリカの大企業で働く女性の最高経営責任者(CEO)について詳細を知ることができるインタラクティブなツールだ(このツールを開発したカーライル・クリフトンに礼を言いたい) 。

サイトでは、大企業の女性CEOに関する人口統計学的データの全体像を把握できる。どんな学校に行ったのか、何歳でCEOに就任したのか、報酬はいくらか、働いているのはどの業界のどの企業か、といったことだ。

データを見ていると驚かされることがある。たとえば、大企業の女性CEOが最も多いのはエネルギー業界なのだ。

女性のCEOや幹部が存在する企業は、依然として非常に少ない。その理由として、ガラスの天井や昇進時の差別のほかにも、以下のようなものがある。

・「トップ」の役職に就くべきタイプについて、企業ごとに固定化した考えかたやステレオタイプが存在する。
・昇進要件が主観的で定義しにくく、意識的/無意識的な偏見が意思決定に持ち込まれている。
・女性や有色人種は、人脈を広げたりメンタリングを受けたりするチャンスが少ない。

ガラスの天井の具体的な仕組みは企業によって千差万別だが、それがもたらす差別的な影響は否定しがたいし、ガラスを打ち破れない人にとっては大きな障害となっている。一般的な女性従業員は、男女間の賃金格差のせいで、年間1万ドルを損しているという調査結果 もある。

ガラスでできた差別の天井を突き破るために、奇抜なテクニックが使われたケースもある。たとえば1960年代当時、有名交響楽団には女性奏者がほとんどいなかった。しかし、1970年代や1980年代になると、複数の交響楽団で、奏者を採用する際に、実験的に「ブラインド」オーディションが行われるようになった。つまり、応募者が仕切りの向こう側で演奏したり、ハイヒールの「コツコツ」という特有の音が出ないよう靴を脱いだりするなどして、ジェンダーや人種がわからないようにする方法だ。

こうしたやり方なら、選考者は奏者の能力に集中でき、どんな人を採用すべきかという、明白なあるいは暗黙の偏見に惑わされることがない。交響楽団におけるブラインドオーディションの影響を評価した「Orchestrating Impartiality 」と呼ばれる画期的な研究は、統計分析をもとに、ブラインドオーディションのプロセスが女性奏者に多大な恩恵をもたらし、初期の選考段階を通過して最終的に採用に至る可能性を高めたと結論づけた。

こうした革新的な取り組みは、女性CEOを増加させ、ガラスの天井を引き続き突き破っていくうえでも役立つ可能性があるだろう。

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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